23話 ページ23
黒子の悲痛な表情を見た後藤は過去を思い出した。
初めてバスケがつまらないと感じるようになったのは、中学一年だった。
部活全体で、後藤は浮いていた。
バスケは上手いが、決して周りと馴染もうとしなかった彼。
だから部活には参加せず、大人たちのストバスに混ざって練習していた後藤。
だがある日、150センチちょっとしか無かった後藤でも、大人たちに圧勝してしまった。
「つ、強くなったなA」
一人がフォローでそう声をかけたが、その人も汗だくで苦しそうだった。
それだけ後藤に翻弄されたからだった。
後藤は気づいてしまった。
開けては行けない扉を開けてしまったと。
それからはストバスに通うこともなく、練習に積極的に参加した。
三年生だろうが、二年生だろうが関係なく、後藤は一人でトリプルスコアのゲームを作ってしまった。
「な、なんだよ、お前!」
「化け物じゃねぇか!!」
中学一年の時に、初めてそう声をかけられた。
その日から余計に部活で浮いてしまった。
全中にて、後藤は一度も試合に出されなかった。
理由は単純、強すぎてバランスが取れなかったからだった。
後藤も特に勝ちに拘っていなかったので、その指示を聞いてベンチにて控えていた。
だが中学二年のある日、扉が開く音がした。
「……」
後藤は閉じていた瞼を開けた。
間違いではない。
やって来たのだ、扉のこちら側に。
こちら側に来るということは、味方を失うこと。
(来るな、ここに。来るな……)
何度心の中だ願ったことだろうか。
それでも、願いは虚しく、彼らはこちら側に来てしまった。
Aは再び瞼を閉じた。
そして、今、目の前に緑間真太郎がいる。
「なぜ誠凛に行った?」
「去年の決勝リーグを見てたからかな。
たった一年生だけで上り詰めて、施しを受けたみたいだけど。
その屈辱戦のリベンジマッチを自分が挑みたかったんだ」
「……」
「後、そこなら、同じ天才同士でも、勝ち負けに限りがある。
強ければ強いほど、辛い思いをしたのならさ、いっその事弱くなるのもありじゃんね」
緑間は後藤の言葉の意味を理解できなかった。
黙り込んでいた時、後藤は笑いながら緑間の肩を叩いた。
「まぁ正邦なんてぶっ潰してやるから、そこで待ってろよ」
それは正しく、宣戦布告だった。
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美園(プロフ) - 更新ありがとうございます!めっちゃ好きです (1月2日 18時) (レス) @page42 id: 0b7aaa97b0 (このIDを非表示/違反報告)
こと(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!続き待ってます!! (12月27日 10時) (レス) @page41 id: 8bdd3d2cd9 (このIDを非表示/違反報告)
メンヘラ君。(プロフ) - 夢主君かっこいいですね!更新楽しみにしてます!無理せず、がんばってください! (2023年3月31日 22時) (レス) @page10 id: 49ed8a4d79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩こんぶ | 作成日時:2023年3月18日 23時