9話 もっと話していたかったのに 【作哉】 ページ10
「でね、安室さんって格好いいだけじゃないの。気品もあって、優しくて紳士で。分かる!?安室さんは本と完璧で」
「へー」
私はかれこれ1時間話してる。
一回しか会ったことないけど、一目惚れだけどでも、あのかっこよさは世界一、いや宇宙一なのである。
きゃーッ!もう、ほんと最高。
コナン君は聞き流しているみたいだけど、私はずっと話し続けた。すると、カランコロンと店のベルが鳴って人が入ってきた。痛い目で見られると、私は一般人あくまで、一般人のように紅茶を飲んで普通感を装った。
ふわりと、その人が私の横を通る。
あれ、この臭いって。
「安室さんっ!」
「貴方はこの間の……」
私は椅子から立ち上がって安室さんを指さした。いや、ここでバイトしているって聞いてきて正解だったな。と、私はうなずいた。
安室さんは一瞬困ったような顔をしたけど、すぐにあの王子様スマイルで私を圧倒しバックヤードにいき着替え、仕事を始めた。その姿も、身なりも全て格好いい。
「あの安室さん」
「はい、何でしょうか。綾さん」
「え、いや、何でも無いです」
安室さんとばっちり目が合ってしまい、思わず下を向いた。格好いい人、大好きな人の前では平然を装えない。それどころか、普段通りに振る舞えない。
私は、チラチラと安室さんを見ながら紅茶を飲んだ。あ、空だわ。
「そういえば、綾さんは東都大学の学生さんでしたよね?レポートとかいいんですか?」
「大丈夫です、そこら辺しっかりしているので」
空になって直、私は紅茶のカップを持って安室さんと話した。持っている手は震えていて、カタカタと陶器がぶつかる音がしている。私は、安室さんを見てから時計を確認した。
気づけばもう四時。
クソ兄貴は料理ができない。それどころか、食材選びさえできない。
ご飯を作るのは私の役目で、四時半からスーパーでセールがあるから……安室さんとの夢の時間はこれでおしまいのようです。
「すみません。家族の晩ご飯作らないといけないんで、帰りますね。ありがとうございました」
「綾さんって、家族――「コナン君黙って!あ、後お釣りいらないんで」
と、私は自分の連絡先と千円札を出してポアロを後にすることにした。
連絡先。連絡してくれるかな?
「いつでも、連絡くださいね」
私は笑顔でポアロをでた。
はいはい。スーパーのセールには間に合いそうですよ。
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