山吹123 ページ3
池の水が飛び跳ねた。口から、鼻から、水が流れ込む。
「がはっ」
呻き声を上げ、リクオは先程ぬらりひょんに蹴られた場所を抑えた。
水面上から、ぬらりひょんの声が響く。
「老いぼれの蹴りひとつかわせんとは…、呆れたもんじゃ」
その声と共に、長年聞き慣れた幹部のひとり、烏天狗の声もリクオの耳に届く。
「総大将…、それはやり過ぎでは」
「…いや、わしは少し
低く、唸るような、絞れるような声だった。その言葉と共に、溜息も零れたようである。
「……」
冷や汗を浮かべる烏天狗に、ぬらりひょんは仕方が無いというように首を振った。
「その必要は、ねえぜ」
「……鯉伴」
「二代目…」
いつから居たのか、鯉伴が腕を組んで縁側に立っていた。
「先週だが、言伝と共に、手紙を出しといた、烏天狗にな。今日中にはこっちに来るだろう。安心しな」
そうなのか?と言うように、横目で烏天狗を見るぬらりひょん。烏天狗は黙って頭を下げた。
「まあ、そろそろ俺も潮時だしな。こいつにゃ、いずれこの百鬼を率いてもらうことになる。その時期が早まっただけさ」
自分の右腕を見据え、鯉伴は呟いた。
「……若菜さんのこともだろう、お主の場合」
眉間に皺を寄せ、ぬらりひょんは視線を逸らした。
若菜の病気は、リクオを授かった時からだった。やっとの思いで子を授かり、皆喜んで祝福する筈だった。
咳、嘔吐、吐血、頭痛と繰り返される激痛に、神の痛みと言われる陣痛と闘い、リクオを産んだ若菜。リクオを産んだ今でも、それは変わらず続いていた。その病気に、鴆も頭を抱える程である。
密かに、屋敷内では噂で「呪いなのでは」と囁かれていた。三百年前のあの騒動を知る、幹部たちも、そんなことを考えている。
そう、未だ古い幹部のみが知る「山伏乙女」が今子供を授かり、幸せになっていることを嫉妬し、呪っているのでは、と。
「覚悟を、決めとけよ。鯉伴」
「…………分かってる」
あの騒動は、まだ終わっちゃいない。
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怜 - このお話しの続きみたいな (2021年12月1日 19時) (レス) id: 268141ac8f (このIDを非表示/違反報告)
寅丸号(プロフ) - 出戻りしました。訳あって更新できず、1から作り直しています。良ければ覗いてください。 (2019年6月5日 21時) (レス) id: aa5f260623 (このIDを非表示/違反報告)
火怨(プロフ) - 面白かったですが、辞めてしまったのは残念です、違うところでも頑張ってください (2017年12月1日 0時) (レス) id: c7b0e83110 (このIDを非表示/違反報告)
瑠那(プロフ) - これだけ作品が多いんです。パクリだからと言って辞めてしまってはキリがありませんよ。せめて完結させてほしかったです。小説を書いて他人に読んでもらっている時点で小説家なんです。責任をもってください。完結させないなら書かないで。面白かったのに残念です。 (2017年6月30日 22時) (レス) id: b7eb31190a (このIDを非表示/違反報告)
瑠那(プロフ) - 辞めてしまって言うのもどうかと思うんですけど...。原作沿いで作品を作っているのなら似てしまうのも仕方なくありませんか。勿論、相手の方と話してパクリだと認められたのなら別です。有名になってないだけで、この作品より前に似たようなものが作られたかもしれない (2017年6月30日 22時) (レス) id: b7eb31190a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:揺樹 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月15日 22時