山吹136 ページ16
その後は、うまく事は進んでいった。イタクや淡島の他の妖怪たちともリクオは仲良くやっているように見えた。
そんな関係を見据えて、「山吹」という女のことを聞けばみんな口を揃えて「お前は知らなくていい」とそっぽを向いてしまう。
そんな微妙な関係の中。それは届いた。
『陰陽師は壊滅。京都が羽衣狐の手に落ちる』
唐突なその知らせに、淡島はリクオにすぐさま伝えてくれたようだった。当事者といえるリクオではなく、淡島が大慌てで焦っている。
その様子を見てるからに、少し笑いが零れたのは内緒。
その知らせは、リクオをある決心をつけるのに充分なものだった。
────────
ワイワイと団欒のように飯を食う中、リクオは姿を表した。その表情は来た時とは大きく違い、成長さが伺えた。
赤河童もそれに気付いたようで、「あありえない」と言いたげに目を見開いた。
「リ…リクオの奴、何もたもたしてんだよ。さっさと出ていきゃいいーじゃねーか」
そう言って顔をしかめる淡島に、イタクは呆れたように「いいから黙ってろ」と告げた。
「……てっきり、勝手に出ていくものだと思っていた。死んでないってことは…多少は強くなったんだろ?」
赤河童がそういえば、それに便乗するように、隣の河童が嘲笑うかのように「多少な」と口を開く。
赤河童はいいとして、隣の河童が笑うのはよく分からず、少なからずリクオは赤河童の隣の河童に嫌悪感を抱かざるを得なかった。
だが、それではけじめにならないと、首をふる。そして正座をし、頭を下げる。
「短い間でしたが、遠野の皆様方には昨今駆け出しのこの私の為に稽古をつけてくれたこと、厚く御礼申し上げたい」
そう言ったリクオに、周りのものは驚いたようにほう、と呟く。
「律儀に挨拶しに来るとはな。『遠野』とうまくやる為に教え込まれた処世術かい?
じいさんの英雄譚ばかり、聞かされているだろうに」
赤河童は「実際は」とまだ続ける。
「先代が『右腕に支障をきたしてからの奴良組は、弱体化の一途を辿っている』のにな…」
それに、誰もが行き詰まる。
そう。鯉伴は右腕が充分に動かず、思い通りに刀が握れていないのだ。
理由は未だ不明だが、噂では『呪い』という説もあった。それは、奴良組を大きく揺るがす単語。
ぼう……と、赤河童の顔を見るリクオに、赤河童は「お前は何も知らんか」と呆れたようにクククと笑いを零した。
616人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜 - このお話しの続きみたいな (2021年12月1日 19時) (レス) id: 268141ac8f (このIDを非表示/違反報告)
寅丸号(プロフ) - 出戻りしました。訳あって更新できず、1から作り直しています。良ければ覗いてください。 (2019年6月5日 21時) (レス) id: aa5f260623 (このIDを非表示/違反報告)
火怨(プロフ) - 面白かったですが、辞めてしまったのは残念です、違うところでも頑張ってください (2017年12月1日 0時) (レス) id: c7b0e83110 (このIDを非表示/違反報告)
瑠那(プロフ) - これだけ作品が多いんです。パクリだからと言って辞めてしまってはキリがありませんよ。せめて完結させてほしかったです。小説を書いて他人に読んでもらっている時点で小説家なんです。責任をもってください。完結させないなら書かないで。面白かったのに残念です。 (2017年6月30日 22時) (レス) id: b7eb31190a (このIDを非表示/違反報告)
瑠那(プロフ) - 辞めてしまって言うのもどうかと思うんですけど...。原作沿いで作品を作っているのなら似てしまうのも仕方なくありませんか。勿論、相手の方と話してパクリだと認められたのなら別です。有名になってないだけで、この作品より前に似たようなものが作られたかもしれない (2017年6月30日 22時) (レス) id: b7eb31190a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:揺樹 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月15日 22時