俺から見たアイツ【◆虹村】 ページ9
ほっとけない後輩___
そんな言葉がぴったりと当て嵌まる。
ほっとけない、にも色々あると思うが…
ほら、アレだ。
はじめてのおつかいに送り出した我が子を
ソワソワしたりヒヤヒヤしたりして
陰から見守っている親の感じ。
そして、何故だが俺は懐かれていて
懐かれていると悪い気はしなくて
自分で自覚するくらい、可愛がっていた。
「虹村先輩!聞いて下さい!大輝がね__」
青峰の話をするAは
表情をころころ変えて、可愛らしかった。
それが、2年になると
青峰の話は出なくなって
出たとしても、その表情はいつも同じ。
今にも泣いてしまいそうな顔。
偶に、女バスの試合を見に行ったが
コートにいるアイツはやっぱりそんな顔で
バスケを頑張っていた。
出会った頃は
あんなに、楽しそうにしていたのに。
「Aばっかに、ボール集めてんじゃねーよ」
ちょっとは、てめぇで考えろ__
なんて、女バスの主将に言ってやるが
そいつも、他の部員も、その意味がわからない
といった顔をしていた。
でも、それを聞いたAは
目にいっぱい涙を浮かべていて
溢れないように我慢していたから
手を引っ張って、誰もいないとこまで連れ出した。
「余計なこと言ったな。悪い。」
ふるふると首を横に振るAは
まだ涙を我慢していて、見てられなかった。
「泣けばいいだろ」
ポンと頭に手をやれば
Aはぽろぽろと涙を溢しだす。
「泣いてません」
いや、泣いてんだろ。
この状況で強がるAに吹き出してしまう。
それに目が釣り上がったが、全く怖くねぇ。
どちらかと言えば可愛い。
「はいはい、Aちゃんは強いですねー」
なんて揶揄い、頭をくしゃくしゃすれば
真っ赤な顔で震えていた。
そんな事があっての、全中決勝戦での出来事。
皮肉な事に、Aの退部後
女バスの練習量は増えたらしい。
辞めた事を青峰達に、責められた後の
Aの表情は、忘れられない。
本当に、消えてしまいそうで…
俺は辞めた事を責めたりできなかった。
わかっていたから…
もう、限界だって。
気付いてたのに、助けられなかった。
卒業式の日、
俺の第2ボタンがついていた所を
凝視するAに笑いそうになった。
ほんと、わかりやすくて可愛い奴。
でも、お前には何もやらねぇって決めていた。
俺はもう、どんなに頑張っても近くにいてやれねぇから。
早く俺なんか忘れちまえ、
そう思いながら、Aの気持ちに気付かないふりをした。
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作者名:chieko | 作成日時:2023年12月4日 23時