好きな匂い【◯】 ページ35
「Aちゃん、どんな匂いが好き?」
「てりやきバーガーの匂い」
「違う!そうじゃなくて」
「ポテトが揚がる匂い」
「わか(る)!オ(レ)も好き!」
「黙れ早川っ!」
「なんなんですか、森山先輩」
部室で日誌を書いていれば
森山先輩が帰り支度を済ませてこちらにやって来て
質問してきた。
素直に答えているのに、違う違うと険しい顔をしている。
「お前、食い気ばっかだな」
同じく支度を終えた笠松先輩に呆れたように言われた。
失礼すぎる。
「合コンばっかの先輩達に言われたくありませーん」
そう嫌味ったらしく言えば
真っ赤な顔で怒られた。
「Aっち、シャンプーなに使ってるんすかー?」
「やめろ、バカ犬」
黄瀬が急に髪の匂いを嗅いできたから
頭をシバいてやった。
なんだか恥ずかしかったから、つい赤くなる。
「え、可愛いAっち!恥ずかしかったんすかー?」
「やめろ、変態か」
ベタベタしようとしてきたから
すかさず、笠松先輩がシバいてくれた。
「Aちゃん、多分森山が言ってるのは制汗剤のことだと思うよ」
小堀先輩が笑って教えてくれるから
そういうことか、と納得した。
「なんでもいいですよ。」
「嘘つき!柑橘系苦手って言ってたよね?!」
森山先輩が、まだ気にしてるみたいだ。
本当、困った先輩だ。
「教えてやれば?減るもんじゃあるまいし」
中村先輩が冷やかにそう言う。
多分面倒くさいんだろう。
「無香料が1番いいかと」
「だからそうじゃないんだって!」
まるで駄々をこねた子供だ。
「意地悪っすね」
「意地悪やめろよ」
「早く終わらせて帰るぞ」
黄瀬、中村先輩、笠松先輩に呆れて言われてしまう。
え、私が悪いのこれ。
んーっ、と顔を顰めて考える。
そんな私を皆で囲んでいて、ふと気付いた。
あ、この匂い嫌いじゃない。
「今のままでいいですよ」
「え?」
森山先輩だけじゃなく、他の皆もきょとんとしていた。
「そのままで十分好きです」
そう言えば、全員真っ赤な顔で固まったから
放置して、席を立ち日誌をもとに戻す。
「あの、Aちゃん?それってどういう…」
「ですから、今の匂いが好きです」
一体なんなのか、眉間に皺を寄せて
そちらを振り返れば、森山先輩にガバッと抱きつかれた。
「Aちゃん、大好きーっ!!」
「やめろ!森山ァァ!!」
そんなことをするから
勿論、森山先輩には笠松先輩のシバきが入ったが
「お前も変なこと言ってんじゃねぇ!」
何故か私までシバかれたのだった。
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作者名：chieko | 作成日時：2023年12月4日 23時
