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「…ねえ、A。これ何？」
スバルくんは僕の薬を持ち上げます。ダンボール箱は片付けていたようです。助かりました。
それだけで、誤魔化しやすくなります。
『ああ、それは僕のビタミン剤です。なんだか今日は体調が優れなくて……』
出したままになっていましたね、と照れ笑い。
どうです。僕の演技力もなかなかでしょう。演劇部に入ってもいいかもしれません。
…いえ、それは北斗くんに反対されますね。日々響先輩を変態仮面、と呼んで嫌っているようですし。尊敬もしているようですが。
嫌いながらも尊敬している、難しいことです。こういうのは人間の特権でしょう。
AIなんかには分からせません。まあ、僕もあそこの関係性はよく分かっていませんが。
「ふうん……ならいいけど、大丈夫？ 体調」
あっさりと薬から手を離すと、こちらを気遣うような目線を送ってきます。かなりの罪悪感です。
ちくり、ちくりと柔らかいもので心臓をえぐられているような罪悪感。なかなかに辛いです。
『はい、ありがとうございます』
そう返すと、教室の中はとても静かになります。普段は騒がしい彼ですが、僕に合わせてくれているのでしょうか。そうならば彼はとても優しいのでしょう。僕なんかに合わせる必要はないのに。
朝の陽ざしが教室に差し込んで、部屋を明るく照らします。２人っきりの教室内は静かながらもとても心地いいです。
そんな中。
ぐるぐるぐる。大きな音が教室に響きます。
なんの音でしょうか。
「……ねぇっ！ なんか食べるもの、持ってない！？」
スバルくんがぐるんと振り返ったかと思うと、そう聞かれます。今のは腹の虫だったのでしょうか。
ビニール袋の中から、先程もらった板ガムを取り出します。お腹にたまるわけではありませんが、誤魔化すくらいなら出来るでしょう。
『ガムで良ければ、差し上げます。僕はあまり食べないので』
そう言って丸ごと差し出すと、1枚取り出して口に入れます。
ミントの爽やかな香りが教室を包みます。
なんだか頭がスッキリします。僕も一枚食べても良かったかもしれません。
とりあえず、スバルくんが来てしまったので今日はまだ死ねなさそうです。
人に死ぬところを見せる趣味はありません。
本当に死ねそうなら死にますが。
とうにぬるくなってしまったジュースをずるずると吸い上げました。
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無名(プロフ) - 何年も前の作品みたいなのでお返事は返って来ないんだろうし伝わることもないのかもしれないとは思いつつも最高の話すぎてコメントを残したい。思わず涙出るほど感動しました。いいテンポで進んで読みやすかったです。最高の作品をありがとうございます。 (2023年1月3日 8時) (
レス) @page47 id: 04d38e0bdf (このIDを非表示/違反報告)
咲耶(プロフ) - この話凄く好きです。感動しました！ (2018年10月16日 5時) (レス) id: e18275a362 (このIDを非表示/違反報告)
早姫(プロフ) - 感動しました〜...！こう...仲間の大切さとか､友情ってこんな感じなんですかね？もしも､男主君が転生したら今度は幸せになって欲しいです〜！感動し過ぎて､涙が止まらず親に驚かれました...(￣▽￣;) (2018年5月24日 17時) (レス) id: 37587c2084 (このIDを非表示/違反報告)
果凛(プロフ) - かきぴーさん» 返信が遅くなり、申し訳ありません汗 そこまで言っていただけるなんて……！ありがとうございます。目を擦ったら腫れるので、ちゃんとハンカチで押さえてくださいね。笑 (2018年3月21日 8時) (レス) id: 38593f3572 (このIDを非表示/違反報告)
かきぴー - さっきから目を開いても前がよく見えないと思ったら瞼が腫れてるだけでした。めっちゃ号泣しました！！！隊長イケメン！！好き！！好きです！！！最後は家族の元に旅立ってしまった男主でしたが、仲間の大切さがよくわかる話でした！！ (2017年12月15日 22時) (レス) id: 41dff5bdb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：果凛 | 作成日時：2017年8月30日 17時
