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「……っ! 英智……」
母さんも、もう1人の女性も僕が急に現れたことで驚いているようだった。
……そうだ、思い出した。彼女は、Aのお母さんだ。
前に、嬉しそうに僕に紹介してくれたっけ。
それから母さんとAのお母さんは、僕にすべてを話してくれた。
彼女が時々、「私はもう死ぬんだ」と漏らしていたこと。彼女の容体が急に悪化し、亡くなってしまったこと。
そして___彼女の心臓は今、僕の体の中で働いているという事。
「これ、Aから預かってたの。英智くんが22歳になったら渡してって。
でも……もう渡しても、いいかもしれないわね」
かさりと音を立てて取り出されたのは、桜色の便箋。
彼女が「遠い田舎に行った」という嘘をついたものと同じ。
〈久しぶりだね。Aです。
この手紙を読んでるってことは、全部分かってるんだよね。
これはね、私が英智君のドナーになろう! って決めた日に書いてるんだ。もうお医者さんにも話は通してあるよ。
田舎の方に行く、なんて嘘ついてごめんね。また5年後、なんて会えもしないくせに言っちゃってごめんね。
それでも、私は嬉しいんだ。こう言ったら英智君は怒るかな。でもね、私は本当に嬉しい。
もう今だから言うけど、私ね、英智君のことが好きなんだ。
好きな人の体の一部になれるって最高じゃない? 私はそう思うな。
さて。英智君には、私のことを忘れてほしいんだ。
えへ、今告白したばっかりなのに何言ってんだ、って感じだよね。でも、私はそうしてほしい。
英智君は私のことは全て綺麗に忘れちゃって、可愛い奥さんと結婚して、何なら子供も作って楽しく過ごしてください。
あ、もしかしたらもうそうなってるかもしれないね。これを読んでるころには22歳なんだろうし。
……さてと。私からの手紙はここで終わり。
今「私のことは全部忘れて」って言っちゃったけど、少しだけ。年に一度だけでもいいから、この手紙を取り出して思い出してほしいな。英智君のことが好きだった、こんな女の子がいたんだよーって。
最後に。私は病気で長く生きられなかったけど、すごく幸せでした。
好きな人ができて、その人と毎日のように会えて、話せて。
今まで、ありがとう。
一ノ瀬A〉
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果凛(プロフ) - ∞弓鶴∞さん» ありがとうございます! そう言っていただけると本当に嬉しいです。この作品を通して私が伝えたかったことが伝わればな、と思います。ご閲覧ありがとうございました。 (2017年11月4日 9時) (レス) id: 7fadf07f5e (このIDを非表示/違反報告)
∞弓鶴∞(プロフ) - コメント失礼します…とても胸にくるお話です…。果凛さんのお話のコンセプトがものすごく大好きです(語彙力がなくて申し訳ないです)、これからも頑張ってください! (2017年11月4日 9時) (レス) id: ed6a6b2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:果凛 | 作成日時:2017年11月2日 15時