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｢じゃあね！朝練ガンバ！｣
頑張れ！と拳を差し出す彼女にしぶしぶを装って拳を合わせる。すると嬉しそうにニッ！と明るい笑顔を俺に見せつけた。
その笑顔が眩しくて、あったかくて、寒さなんか忘れてしまいそうで。
側から離れたくなくて隣にいたくて。
でも、かけてく彼女を止めることは俺にはできなくて。
彼女がいなくなった瞬間、あたりが急に寒くなった気がした。
(だから、冬は嫌いなんだ)
寂しくて、悲しくて、どこか儚い。孤独と静かなはずの喧騒に呑まれて自分の感情まで呑まれてしまいそうで。
降ってきた雪も無視して。体育館に逃げ込むように入っていった。
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体育館に入ると、なんだかいつもより騒々しいことにどうしもうもない嫌悪感に襲われる。冬は、騒がしいのが嫌になる。静かなのはもっと嫌なのに。
冬は、気持ちがナーバスになる。神経質になり、すぐに苛立ってしまう。孤独なのは嫌だけれど、賑やかなのも嫌だ。そう、隣にいるのは一人でいい。彼女だけで、いい。
｢よぉ黄瀬！お前はクリスマスどうすんだよ｣
青峰っちのテノールの低めの声で声をかけられて、振り返る。ああ、クリスマスのことで盛り上がっていたのか。と確認すると、すぐに笑顔を作って｢え〜なんすかー？｣とかけていく。
みんなが各々の迎えたいクリスマスの話をしている中、ぼーっとしながらAのことを考えた。Aはクリスマスどうするんだろう。
彼女の色恋沙汰は特に聞かない。だが、モテるのは事実だ。明るく優しく可愛い三拍子を揃え、ノリが良くまとめるのも上手い。かと言ってバカではなく頭もよければ陸上部のエース。ここまで揃った子はいないだろう。
ああ、鬱陶しい。
Aに近づく邪魔な男共も、拒まないAにも、嫌気がさす。フレンドリー精神がなんだ。それでなんになる。彼女は俺がいればいいじゃないか。
きっとこんな独占欲も、冬のせい。
｢おい、おまえら、もちろんクリスマスも練習だぞ。｣
赤司っちの声が体育館に響いて、絶望のうめき声が増えていく。それを見ながら俺は、バッシュの紐を結び直す。
きつく、かたく、解けないように。
彼女の関係性と、同じように。
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