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「Aはサンタ信じてる？」
『そりゃもちろん』
深く頷くと「だよねぇ。やっぱいるよね、サンタ」と敦くんもごもっともというようにこくこく首を縦に振る。
「Aはなにもらうの？」
『え〜っ、と、図書券？』
「うわマジメ〜」
私の苦し紛れな答えにもっとロマンチックさを求めていたらしい彼は分かりやすくげんなりして「えーお菓子にしなよ〜」と私の肩を掴んで揺さぶった。
『お菓子は敦くんもらうんでしょ』
「そうだけど〜」
また頬を膨らませてぶうぶう一通り不満を漏らしてから彼は「じゃあお詫びにハグ」と意味の分からないことを言ってながーい両腕を広げる。
『は、はぐ…』
「なに躊躇してんの。ほらはやく」
『え』
したくないわけではないけれど、気恥ずかしくてなかなか彼の胸に飛び込めない私に痺れを切らした敦くんはがばっ！と私に覆い被さった。
全体重が私にのし掛かり勿論耐えきれずそのままふたり床に崩れる。
『わっ、えっ、あつ、敦くん！』
「Aが来てくれないから〜」
『おっもたい…95kgはおもたいよ…』
抱き枕のように私を抱いて、彼は頬擦りしたり額にくちづけたり。されるがままの私を呼んで彼の方を向けば軽くキスされた。
『わ、悪いこのとこにはサンタさん来ないよ』
「なんで？Aもしたいでしょ、こういうの」
『や、それは』
「だからいいの〜」
彼の純粋で自己中心的なところには困らされるが、好きなものはすきなんだから仕方がない。
「あ、恋人はサンタクロースって言うじゃん？オレからも何かあげるよ」
突然あの歌を思い出した彼が「なんか欲しいものある？」と母の日の前の子供みたいな照れ臭そうな笑みを浮かべる。
『え、そんな急に言われてもぱっと浮かばない』
「べつにいいけど。ゆっくりで」
『明日でもいい？』
「今日まで」
『うぐ』
欲しいもの、して欲しいことと言われても何も浮かばない。普段欲しいものなんて山ほどあるのに。
『…来年もその次も、敦くんがかっこよくバスケしてくれたらそれでいいよ』
「なにその無欲なお願い」
『いいの』
「ふーん」
起き上がった彼は「バスケねぇ…」とぼやきつつ鞄から小さな個包装のちょこを取り出して口に放った。
『その代わりめちゃめちゃかっこいいところ見せてね』
「え〜」
げんなりする敦くんの背中をべしべし叩くと「まぁ、がんばる、かも」となんとも微妙な返事をした。
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