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手を引かれて来たのは綺麗にイルミネーションされたツリー。
これ、前にテレビで特集やってたな。
大輝もこういうの知ってるんだ、なんてちょっと感心。
『付き合えってこれのこと?』
「…おー、わりいか?」
『や、べつに…』
大輝はツリーを見たまま答える。
私も同じものを瞳に映した。
「Aと見たかった」
『へ、』
「って言ったら」
びっくりして横を向けばかち合う視線。
私は何も答えず、自分の足元を見た。
『…私ね、大輝が好きだった』
口から飛び出したのは彼の問いに対する答えじゃなくて
一生伝えるつもりのなかった私の想い。
『横暴でだらしないくせにバスケしてる時はすっごい活き活きしててさ。好きなことに一生懸命打ち込んでる姿がかっこいいなって』
「A、」
『けど、ある日聞いちゃったの。大輝とさっちゃんが付き合ってるって』
今思えばなんてことない、ただの噂話だった。
でもその時の私にしてみたらそれは不安な気持ちにさせるには十分で。
『何度か一緒に帰ってるとこも見たし、学校でも仲良かったからきっとそうなんだって思ったよ』
繋いでいた手をぱっと離した。
手のひらがやけに冷たくて、まるであの時みたい。
『だから決めたんだ。大輝を好きなのやめようって』
「…っ、」
『でもね、無理そうだよ…』
私よりも大きい彼の手を取って、自分の頬に当てる。
上から私の手を重ねて、壊れ物を扱うようにそっと。
『好き…匂いとか同じような姿かたちを見ただけで思い出しちゃうくらい、ほんのちょっとのきっかけで思い出しちゃうくらい大輝が、好き』
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