怒れ、少女。【呪術廻戦】

38.戦いが、始まる ページ39

冥冥先輩の術式は、黒鳥操術(こくちょうそうじゅつ)。
烏と視覚を共有できるため、帳内の監視にもってこいだ。だからいち早く特級の出現に気づいた。


｢助けに来たよ。後輩たちが死んだら、人手不足の呪術界は滅亡だ。｣
｢どうせお金目当てですよね｣
｢おや、当たり前だろう？｣
『…"たち"ぃ？』


全員の視界が真っ白になった。
突如として大きな光の球体が頭上に出現し、点滅したのだ。遅れて衝撃波が鼓膜を揺らし、球体が建物を吸い込む。


ズ、ッドオォオン！！


瓦礫の上から人影が見える。いつも白髪頭と弄っていたあの男。


｢特級サマとご対面〜｣
｢悟！｣
｢惚れ直したか？A｣
｢うん！｣


｢当たり前だよなぁ｣と、悟は笑った。
悟の眼が猿謡を捉える。悟は酷く納得した顔を見せ、その片手を挙げた。足を空中に投げ出し、悟が落ちたその瞬間。


ズルゥ


悟の背後から鳥の呪霊が帳に入り、その手を掴んだ。
呪霊の胴体の上には、2人が乗っている。


｢傑！硝子！｣
｢怪我がなくてよかった｣
｢アイツか。Aの仇討ちしてやる｣


私と猿謡の間に、冥冥、五条悟、夏油傑、家入硝子が立った。

1人は1級術師、他2級術師。
敵は特級呪霊1人、準2級その他多数。

戦いが、始まる。









｢おい海老蔵、お前と入れ替わった準2級について話せ｣
『お前六眼だなァ！？興奮するぜ！』
｢質問されたら答えるのがコミュニケーション…だってよ｣


1年生は考える。相手は特級。
この勝敗を別けるのは五条と冥冥、おまけ(・・・)で八重だ。

五条の六眼と無下限を頼りに、冥冥を中心に夏油、家入が攻撃をしかけるのが得策だろう。

八重は最終手段。
なぜなら八重は以前、猿謡の術式との因果関係において有利に立ち、未だ解明不能だが"無効化"もできた。
｢物質化・非物質化｣を使うことも出来る。
また、猿謡はもう八重に領域展開できないという大チャンス。
これは大きな役割を果たす。


『嗚呼、この並び…良いなァ。まるで仲間を救いに来たヒーローだ』


冥冥の言っていたように、1年生の人材は不可欠だ。
だが、だからといって生き延びることを伊達に考えていれば猿謡に勝つことはできない。

八重は既に、覚悟を決めていた。


『だが、ヒーローは俺だァ！！』


その時、5人の足元が無くなった。
咄嗟に呪力で身を守った八重に、猿謡が飛び込む。

しまった！触られる！



｢ッ…｣
｢大丈夫か、A｣
｢…！ 傑！｣




呪霊が猿謡の手を弾いた。

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