2.五条と八重 ページ3
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春風が吹く。
眩い髪がやわらかに靡くごとに、涼し気な鈴の
少し桃色がかった桜の影が、甘い香りと共に少年を包む。
光を反射しないサングラスの奥から、青い瞳がこちらを覗く。
まるで全てを見透かすような快晴の色。
長い睫毛の隙間で光の粒が煌めいて、静かに揺れていた。
「他人の顔ジロジロ見んなよ」
「あ、ごめんなさい」
私の目をじっと見た後、少年はあからさまに右の口角をあげてほくそ笑んだ。
少年は、桜の幹にもたれていた背をグンと伸ばした。
想像より大きい姿に若干戸惑う。
「何?もしかして見惚れた?」
「うん」
少年は、私の応えに少し驚いた様子を見せた。しかしすぐに退屈そうな顔になって、「まあ当たり前だよなァ」と言ったあと、大きな欠伸をして肩を広げた。
一目見て分かった。この男子…きっと私より呪力量が多い。すぐに強くなれそう。同じクラスだったら萎えるかも。
「ねえ。もうすぐ時間だからさ、良かったら一緒に行かない?」
とはいえ私も晴れて女子高生。理想的な毎日を送ってみたい。しかし、返ってきた言葉は無愛想なものだった。
「時間ン?…ああ。お前、新入生だったんだ。俺、先輩なんだけど。」
少年は威圧的な体勢を取って私を見下ろす。
「敬語使わねーの?」
私は、体をじりじり近づける彼の胸元に指を指した。
「制服、ちょっとだけ裾が長いし新品すぎ。あとはなんとなく。」
どちみち嫌な性格をしているので敬語は使いたくないけど。
内心イラついた私は、声色を変えてその目を真っ直ぐ見た。
「ククッ、なんとなくね。当たり。1年の五条悟。仲良くしよーぜ」
目の前に難なく手を差し出される。まあ、そのくらいならいいか。
「八重A。よろしく…」
すると、男は握手を交わそうとした直前で手を挙げた。
「なんてな。ザコと仲良くする気なんてねーよ」
「生意気かよ」
思わず口から漏れたそれは本心だった。もはや仕舞う気も失せた。多分この手のタイプに本性を隠すのは火に油だ。
オエー、と舌まで出す目の前の男に、早くも耐久心を鍛える授業を受けている気持ちになる。
それでも色々我慢して飲み込むと、五条悟という男は良い気になって日の下に顔を出した。
「もし本当に俺が先輩だったら、お前冷や汗かいて風邪引くからな。じゃ。」
颯爽と校内へ戻る五条悟をしらけた顔で眺める。
「………。」
私は逆回りしようと決めた。
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tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか?ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみしろ x他1人 | 作成日時:2022年6月3日 10時