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1.春と青 ページ2

「いってきます」
「いってらっしゃい」

いつもより活きのいい母の声を後ろに、私は日傘をさし、初めての通学路を渡った。


桜の花は寿命が短い。
2週間経てば淡い桃色がコンクリートを埋め、土に還ってしまう。
そんな儚い季節がやってきた。

春の扉を開ければ、何も変わらない自分が生まれ変わったような気がする。
きっと、今横切った車の運転手も、どこか晴れやかな気持ちになっているんじゃないか。


「…進学先が誰にも言えない場所なんて、ドラマみたい。ふふっ」


寒さを乗り越えた先のぬくもりが肌を撫でる。


今年も出会いと別れの季節が巡る。











「東京は何度か行ったことあるけど、勧んで行こうとは思わないな。」

人混みの中でぼそっと呟く。
多少の不安と期待に胸がいっぱいな私は、ガラケーに表示される時間を気にしながら歩く。
首がもげるほど背の高いビルが並び立つ都市部を抜け、20分くらいバスを乗ると、だんだんと緑が見え始め、やさしい空気を放つ場所へたどり着いた。

ここからは徒歩だ。
私は携帯をポケットにしまった。




確か、右、突き当たりを左、そして真っ直ぐ…
道路がないから、足元の草が擽ったい。
どうにか抜けた先には、寺にそっくりな学校と、それを覆う結界があった。
近くまで行くと黒いスーツを纏った人がいたので、勇気を振り絞って話しかけた。


「こんにちは。新入生の八重(やしげ)Aです。」
「八重さん。入学おめでとうございます。
生徒は呪術専門高等学校の立ち入りを許可しています。どうぞお入り下さい。」

足を踏み入れると、ぐにゃり、という音とともに、視界がひらける。





ーー東京都立呪術専門高等学校。2005年4月5日。





爽やかな風が髪を揺らして、建物の木材の香りが鼻腔を掠めた。
景色は今にも寝てしまいそうなほど落ち着くが、呪術ならではの緊迫感が漂っている。天元様かな?


「教室どこだろ。さっきの人に聞いておけばよかった。」


結界内といえど、太陽光はちゃんと届いている。さすが呪術高専。これならサボってもバレない。

入学式まであと10分あると聞いたので、正門横にある立派な桜の木を見物することにした。
立派な幹にしめ縄が括られている。100年は老いているだろうか。


「わあー綺麗。お母さんに見せよう」


私は携帯を取り出して、写真を撮った。


パシャッ



「…誰、あんた。」
「え?」



携帯ごしに、純白の髪が煌めく。

澄んだ青を持つ少年が、そこにいた。

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tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか?ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とみしろ x他1人 | 作成日時:2022年6月3日 10時

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