検索窓
今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:11,087 hit

ページ24

事を済ませた俺は、ずっと布団の中に潜っていた。

そしてそのまま、眠ってしまったようだった。




かたん、と音。

それで俺は目を覚ました。

ぼんやりと虚ろな瞳を開けると、くす、と小さな笑い声。

するり、俺の髪を撫でる仕草にはどこか馴染みがあった。


「ただいま」


ドッ、と心臓が跳ねる。

意識が一気に覚醒して、ばちりと目を開いて飛び起きる。

「おおっと」と言いながら、黒のスーツに身を包んだ男は手を髪から離した。

外は真っ暗で、どうやら寝入ってしまったらしい。

俺は目の前に座る男を見やった。


『……兄さん』

「よく寝てたみたいだな」


そう言って兄さんはにこりと笑う。

その手は膝の上に据えられていて、慌てて飛び起きてしまった自分を憎んだ。

あんなことしなかったら兄さんは俺を……、いや、俺は間違ったことはしてない。

視線を毛布に落とすと、「あ」と兄は言葉を発した。


「プリン、食べるか」


コンビニのレジ袋を掲げて、それはそれは胸のときめくような優しい顔で笑って。




「美味いか?」

『ん』


もぐもぐとプリンを頬張りながら大きく頷くと、「よかった」と。


「その調子だと元気そうで」


ずきり。

また、心臓が痛んだ。

『そうだね』って顔を逸らして、「食べるのに夢中ですよ」のポーズ。

ズルい、ズルいやつだ、俺は。

こんなにズルいから、神様は天罰を俺に下したんだろう。


「あのな、A。

プリン食ってるとこ悪いんだが」

『何?』

「……好きな人が居るときって、どうすればいいと思うか?」


貴方のその。

何とも言えない幸せな顔といったら。


『……え』


はく、と吐息が漏れる。

その口は言葉を紡ぐことはなく。


「ほら、明日はクリスマスだろ。

だから」


だから、この人は想い人に気持ちを伝えようとしているのか。

クリスマスは恋人を作るには打ってつけの聖夜。

ナイスでバッドなシチュエーション。

空になったプリンカップが、俺の指先を滑り落ちて。



『……いっぱい、好きって言ってあげればいいんだよ。

俺だったら、そうする。

それが一番嬉しいから』


「失恋って、こういうものか」と。

身に染みて分かるこの瞬間。

腹の奥底は、「そんなの嫌だ」って五月蠅く喚いている。

みっともなく泣き叫んでいる。

でも俺はこの人の幸せを願わなきゃいけないんだ。

この人の、弟として。




奥歯を、ぎゅっと噛み締めた。

↓→←↓



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
14人がお気に入り
設定タグ:男主 , 集団合作 , 合作 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:男主クリスマス合作企画 x他2人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年11月11日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。