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「そうか、ありがとうな」

『……うん』


こういう時、笑ってあげなきゃいけないのに。

俺は臆病だから、そっと視線を逸らして床へと向けた。

せめて涙がこぼれて、この人に心配なんかかけないように堪えて。


「じゃあ」


どこか張り詰めたような兄の声が、聞こえた。


「……ごめんな」


ふいに、とん、と肩が押される。

何が起きたのか分からなくて、目を瞬かせる。

次の瞬間、だった。


『んんっ!?』


唇に触れた柔い感覚。

頭は守るように抱き締められて、髪をくしゃりと撫でる。

触れられた部分が、熱い。

俺、「兄さんとキスしてる」。

そこまで理解が追い付くのに時間がかかって、分かった後も「何で兄さんが俺にこんなこと」とぐるぐるぐるぐる考えてしまう。

好きな人への、練習かな。

……だろうな

そう思いながらも俺からも兄さんの背に手をまわしたとき、兄さんは俺から離れた。

その視線が妙に熱っぽかったのは、何故だろうか。


「A、好きだ」


びくん、身体に電気が走ったような錯覚を覚える。

唇がはくはくと空気だけを吐き出す中、やっとのことで『嘘だ』と言った。


『……やだ、嘘なんかやだ。

止めて、兄さん、お願い』

「好きだ」

『ねぇ、止めて』

「愛してる」

『やめてってば!』


声を張り上げた。

期待させないでくれ、早く諦めさせてくれ。

変な同情なんて、要らないから。


『俺を玩具にしないでよ……』

「……ばーか」


かけられる言葉が、柔らかい。

兄をもう一度見る。

そのふわりと笑う仕草に心臓が高鳴って、その視線から逃れられなくなる。

どくんどくんと、鼓動が五月蠅い。

兄は俺の目を見て、言った。



「キスだけなんて生殺しの関係はもう嫌なんだ。

……俺はな、クリスマスプレゼントはお前が欲しい。

お前の全部が欲しいんだよ」



兄さんの言葉に、鼓膜がびりびりと震えるようだ。

彼が俺の頬に触れるのを拒まずに、ただ呆然とする。

じんわりと触れられた部分がまた熱くなっていくことに、これが夢ではないと分かった。


「……弟にクリスマスプレゼントをせびる、気持ち悪い兄でごめんな」


兄さんの「ごめんな」は、俺のため。

そう思ったら、またきゅうんと胸が高鳴って。

俺だって、この人が欲しくて堪らないんだ。

そして、手放したくなどないのだ。



『……謝らないでよ。

俺も、兄さんが好きなんだからさ』

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作者名:男主クリスマス合作企画 x他2人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年11月11日 17時

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