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俺が兄さん――市ノ瀬 徹を好きになったのは、正確には四年前のことだ。




小さい頃はは憧れ程度だった。

両親が共働きだったせいで、彼はいつも率先して俺たち兄弟を取り仕切っていた。

明るくて賢くて、いつでも俺の味方になってくれる。

一番、年の離れた優秀な兄。


「Aはいい子だなぁ」


そう言って緩くかき混ぜるように、頭を撫でられるのが好きで。

褒めてくれるのが嬉しくて。

褒めてもらえるようになら何でもやった、掃除も勉強も手伝いも嫌な顔せずに。

そしたら、兄さんはまた俺の頭を撫でてくれるからって。




そして、四年前。

俺は、クラスのとあるグループから虐げを受けた。

理由は単純、「優等生ぶっていたから」。

どうやら生意気盛りの彼らにとって、真面目に実務を熟す俺は苛立ちの対象だったのだろう。

俺は、兄に褒められたいがための行いを続けただけだというのに。


「何でお前は真面目ぶってんだよ」


真面目ぶってるとか、そんなんじゃ無くて。

俺は――



ある日、ついに俺は彼らから殴られた。

反撃なんてできない、だって人数は向こうの方が多いんだから。

奥歯を噛みしめたその時。


「……お前ら、俺の弟に何してるんだ?」


唸るような低い声に身体が震えた。

怖い、そうは思うのにどこか俺の心は安心していて。

次の瞬間、目の前で固まっていた男が消えた。


「大丈夫か、A」


彼ら全員に拳か蹴りをお見舞いして、薄く汗の浮いた額を手の甲で拭って。

怒った表情から、柔らかな笑顔に変わった兄なんか見てしまったら。

全てが俺のための行為だと思ったら。

誰が彼に惚れずにいられるだろう。




こうして恋心を拗らせ続けて約一年。

「クリスマスプレゼントは何が欲しいか」そう聞かれたとき。


「あんまり金のかかるのはダメだぞ。

父さんと母さん困るから。

ま、Aはいい子だからこんな説教要らないだろうけどなぁ」


お金のかからない、俺の欲しいもの。

欲しいものは兄さんの心だ。

でもそんなの叶いやしない。

きゅ、っとしまったあの薄い唇。

兄さんにキスされたら、どれだけ俺は幸せなんだろう……。


「……キスが欲しい、兄さんの」


思わず口走ってしまった、言うつもりなんてなかったのに。

けれども兄は、「お前がそれでいいなら」ってクリスマスにキスをくれた。

甘くてとろけそうで、ちょっぴりほろ苦い。

俺はこれが癖になって、毎年のクリスマスに兄にキスを強請るようになったんだ。

↓→←「君」をください【空弥】



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作者名:男主クリスマス合作企画 x他2人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年11月11日 17時

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