「君」をください【空弥】 ページ22
※15↑注意(一部そういう描写アリ)
・
「最初の過ち」は、三年前のちょうど今頃の季節だったろう。
「今年のクリスマスプレゼント、何が欲しい?」
貴方が優しい声でそう聞くから。
そうやって目を細めて笑うから。
『……キスが欲しい、兄さんの』
こんな訳の分からないことを口走ってしまったんだろう。
十二月某日、正午過ぎ。
俺――市ノ瀬 Aは体調が悪いことを理由に、高校を休んでいた。
普段「体調が悪い」等と言わない俺の言葉を両親は直ぐに信用し、体温計で微熱を偽ると学校へ連絡をくれた。
「勉強を切り詰めすぎてるんじゃないの?」
『あー、うん。
たぶんそう』
母の面倒な言葉は適当に流して、「これぐらいだったら寝てれば治るよ」の言葉も忘れずに。
一つ下の妹は「私も休みたい」と駄々をこね、三つ上の姉は秘蔵だという男同士の――(これ以上は憚られるから言わないでおくが)如何わしい本を枕元に置いてウィンクして立ち去った。
「私だったらこれで一発よ」ってだらしなく笑って、全く迷惑なことこの上ない。
そうして、あの人は。
「大丈夫か、A。
何か食べたいものあるか?
帰りに買って来てやるからな」
痛い、良心が痛い。
ずきずき痛んで仕方がない。
俺が大きめのプリンを注文して、「分かった」と頷くのもまたつらい。
苦しい、苦しい、心臓がぎゅっとなって。
言えない、こんなの言えるわけがない。
「はぁっ、あぅ」
皆が出払った頃、俺は部屋の布団でうずくまっていた。
いや病気を発症したとかじゃなくって、息が苦しいとかそういうのでも無くて。
そう、「意図的な行為」。
「あぅ、はっ、はぁっ」
下着の中に手を入れて熱い息を吐く。
とろける様な甘いキスをして、舌を食んで。
絡まった唾液が糸を引くのにドキドキして。
あの低い声で囁かれたらもう、いけない。
――という妄想
姉の置いていったそういう本がまた俺の欲を掻き立ててしまい、ぶるりと震えたその一瞬。
「あっ!」
声を上げて果てた。
手のひらを取り出して、己の欲の塊である白濁の熱量を見て、じわりと視界が歪む。
泣いてしまわないように天を仰いで、息の塊を一つ吐いた。
こんなの、ただ虚しさを助長するだけなのに。
「実の兄が好きで好きで堪らなくて、その欲を発散させるために休みました」なんて。
「実の兄に抱かれる妄想してました」なんて。
誰にも言えるわけがない。
14人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:男主クリスマス合作企画 x他2人 | 作者ホームページ:http:/
作成日時:2018年11月11日 17時