Diabla姫と悪魔執事 :2章【u/s/s/s】

アガペーな愛 ＊4 ページ5

ごめんなさい、と頭を下げ項垂れている赤い彼


どう言葉を返していいのか分からず、考え込む
しばらくするとぐずぐずと鼻を啜る音が聞こえてきた




(え”っ……もしかして泣いてる！！？)




考えるよりも先に体が動く




私は彼の顔を両手で挟み、ぐいっと持ち上げる
彼との距離が一気に縮まり、目と目が合った




予想通り目の前の青年は赤い瞳にたっぷりと涙を溜めていた





突拍子もない私の行動に思わず固まる青年は
目を見開いた後にぱちくりと数回瞬きをする




すると、瞬きによって瞳いっぱいに
溜まっていた涙がつぅーっと彼の右頬を伝った



思わずその光景に息を忘れる






頬を伝う涙ですら綺麗だ







「A…?」









遠慮がちに呼ぶ彼の声で現実に引き戻される





そこにはガッチリ顔をホールドした状態で彼を至近距離から見つめている私と、訳が分からずそんな私を呆然と見つめる彼がいた






「あ……ごめんなさい、急に…」




急いで彼の両頬から手を離そうとすると、離れていく私の手を逃すまいと彼の大きな手が重なった



その行動に今度は私が固まる番だった




重ねた手に少し力を加え、自分の頬に私の手をさらに密着させる





「離さんどって…」





上目遣いで私を見上げた彼は




「Aの手、あったかい…めっちゃ安心する…」




右頬にすりすりと顔を寄せ、気持ちよさそうに目を細めた。




えへへと頬擦りをする表情は幸せそうで





まるで母親に甘える子どもか





もしくは…犬だ







(ずるいなぁ…)






この人と会ってまだ数時間も共にしていないのに惹かれている自分がいる




怒ったり、照れたり、と思ったら今度は泣いたりして
忙しいくらいコロコロと変わる表情も

少しハスキーで柔らかい声も

甘え上手な所も

上手く格好つけられなくて落ち込む情けない所も


事故で見てしまった彼の引き締まった体
触れ合った手の骨ばった感じと大きさは


いやがおうにも男性ということを意識させられてしまう





(可愛いもかっこいいも兼ね備えているなんて
どんなチート…)





彼は私の視線に気付き「ん？」と頬擦りを続けながら
小首を傾げて柔らかく笑う



甘い声色と表情にドキリと心臓が跳ねる




「あ…あの！」



雰囲気に耐えられそうにない私は彼に一つの提案をした

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