藤北協奏曲…利家とみつ？ ２

MJK？… ７７ ページ34

北山とオレの声がシンクロする…

他の誰と歌っても得られないこの充足感…あるべき場所にいると信じられる不思議な感覚は、初めて声を合わせた時から少しも変わることは無かった



…そう、いつだって君と 守ってく…

僕らの日々……



「…おしまい♪」って言うと、北山が弦から指を離し聞き入ってる二人に微笑んだ、そしてオレの方に顔を向けるとクイッと口角を上げ親指立ててくる

そして、その表情に、オレの心が揺さぶられる…
だから見ないフリをしてきたんだ…戸惑うだけで、返し方が分からないから…

ほら、今も…
伏し目がちにならざるを得ないオレに、利家の感嘆の声が聞こえた

「素晴らしい…太輔とみつ殿の歌を聞いていると、みつ姫と見た風景を思い出した…風の香り、茜色の夕焼け…抜けるような青空…流れる雲…二人で見た風景が、そのまま目の前にあるようだった…ありがとう、何よりも嬉しい…」

「本当に…、私もそう思います、全てが懐かしい日々…心の中に、とても暖かい光を感じました…ありがとう…」


花の様にフワリと微笑むみつ姫…そしてその笑顔を春の日差しの様に包みこむ利家…何にも変えられない唯一無二の《愛》がここにあった


「…もう、行かなくては…」

静かな利家の声が聞こえた

「そうですね…」と、寂しさを滲ませたみつ姫の声が続く

「行くのか？」
「はい、私とみつ姫の長い旅は終わりました…やっとあるべき場所に戻れます…私の大切な撫子と共に、もう離れることのない時間を過ごします…」

そう言って傍らのみつ姫の肩を抱き寄せる利家に、みつ姫が微笑みかける、撫子の花がどんな花なのかはわからないけど、きっと今のみつ姫の様に、可愛らしさの中に凛とした姿を感じさせる佇まいなんだろう


「元の時代に戻るのか？」

北山の問いかけにみつ姫が小さく首を横に振った、北山とオレの表情に疑問符が浮かぶ


「いいえ、…私たちの《未来》に戻ります…」

「…未来？」
「そうです、…誰よりも深い絆で結ばれた、私達の《未来の姿》に戻ります…」

微笑む二人が、オレと北山にそっと手を差し出した


北山の手にみつ姫が、利家の手がオレの手を取る…そして、オレと北山の手を重ね合わせた

「…え…？」
「なんで…っ…」

驚くオレ達に、《利家とみつ姫》が大きく頷いた


やっとめぐり逢えた…
ずっとずっと探していた《奇跡の出逢い》…


私達と同じ、愛しさと切なさを知ってる二人に…




どうか貴方達は、幸せでいて下さい…──

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