月下美人の君.5

【政】依依恋恋.3 ページ8

〜政side〜


政 「その話は本当か！昌文君！」


昌文君 「は、はい…。大王様！
なんでも王騎を支援していた大名達に、上から圧力をかけたようです！」


政 「ふざけるなッ！！！」

怒りで思わず、椅子に拳を叩きつける。
それでも、収まらない憤怒は立ち上がってそこら中に当たり散らした。


昌文君 「大王様ッ！落ち着いて下さい！！」


政 「これが落ち着いていられるか！
…奴め、どういうつもりだ」


髪を振り乱し怒っている政。
普段、感情を表に出さない彼は、Aが絡むとすぐ取り乱してしまう。


政 「…こうしてはいられん！

昌文君ッ！今すぐ成蟜の所へ行くぞ！」



昌文君 「なりませぬッ大王様！
…ここ数日、急を要する公務ばかり立て籠もっております。それが落ち着かぬ限り、外出は難しいかと」


政 「チィッ……！

ならば、急ぎ公務を終わらせるッ！
早く仕事を持ってこい！」


昌文君 「…だ、大王様っ」


呆気に取られる昌文君。
周りの侍女達は、急ぎ支度を整える為にバタバタと走り出した。


ふんっ…と鼻息荒く一旦椅子に座った政を眺め、


昌文君 「…(ここまでAの事を好いておられたとは…)」


大王様の青春のひと時を感じるのだった。



⭐

〜瑠衣side〜


瑠衣 「成蟜様が…成蟜様がーーー！！」


ヨロヨロとショックで崩れ落ちる。


女官 「瑠衣様ッ！気をしっかり！」



瑠衣 「何者なんですの？…その女は？」


女官 「はぁ…。王騎将軍の娘…という事しか聞き及んでおりません。
ですが、なんでも女の身でありながら、
先の戦で敵将の首を討ち取ったとか…」


瑠衣 「…！」

王騎の娘と聞いて、同情してしまった自分を諌める。今の秦国は、王騎が亡くなってから数ヶ月経ったとはいえ、その存在を大きさは瑠衣も承知の上だ。

だが、女の身で戦場とは……


瑠衣 「成蟜様が危ないですわ！」


最初は女の嫉妬で…今は筋肉マッチョな獣のような女が成蟜に襲いかかっているイメージしかなかった。


こうしてはおれないと、急ぎ支度の準備をする。
「瑠衣様！」と騒ぐ女官達を無視して、足を速めた。

【政】依依恋恋.4→←【政】依依恋恋.2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す