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「開けてもええ?」
「…どうぞ」
「ありがとうございます」
リボンを引っ張って解いていると、「うわやっぱなんか恥ずいな」とのんちゃんが笑って袋から目を逸らす。
「可愛い…」
中に入っていたのは、手袋。
袋から取り出して呟くと、のんちゃんが口元から白い息を零して笑う。
「おててが冷たいAちゃんに」
「……ありがとう」
ふふ、と笑うのんちゃんの声が聞こえたけど顔を上げられなくて、目を伏せたまま二人で笑う。
早まった鼓動はなかなか元には戻らない。
「めっちゃあったかい」
「ほんま?」
「うん、なんか生地が厚くて」
「良かった」
手首のところで両手の手袋が止まっているからすぐには使えず鞄にしまって、もう一度お礼を言う。
「わたしも…」
鞄から出した袋を差し出すと「マジで?」と私を見下ろすのんちゃん。
持って来たは良いものの、なかなか渡す勇気が出なくて、このまま持って帰ろうかとも考えていた。
「嬉しい」
その言葉に張り詰めていた緊張が少しだけ緩む。
「開けてい?開けるな」なんて返事を聞かないのんちゃんに少し笑いながら、伺うように見る。
「えっ、嬉しい。筆箱欲しかってん」
「…ほんまに?」
「うん、ありがと」
のんちゃんと図書館で勉強した時に見た筆箱は中学生のときにも見たことがある気がして、所々布がほつれていた。
せっかくのクリスマスイブだから何か用意したいとは思ったけれどのんちゃんにちゃんとしたプレゼントをあげるなんて小学校低学年の誕生日とかが最後。
値段が張るものは友達からもらうには重たいし、と考えてあまり好みが分かれなそうな皮の筆箱にした。
のんちゃんが出した筆箱を袋に戻して、また柵に両肘を乗せて、前を見る。
「綺麗やな」
ゆっくりと呟いたのんちゃんがこっちを向いた気配を感じて私も視線を動かすと、ぱちりと目が合う。
のんちゃんが下を向いて、小さく笑った。
「A」
「ん?」
顔を上げると、柵に置いていた肘をゆっくりと下ろすのんちゃん。
視線が重なって、のんちゃんの目がゆらり、と揺れた。
「好きです」
耳に届いた言葉は噛み砕くのに時間がかかった。
でも視線は動かなくて、のんちゃんとずっと目が合ったまま。
「俺Aが好き」
「えっ…」
やっと漏れた声は掠れていて、喉がきゅうっと閉まっていく。
やっと、自分が泣きそうなんだって気がついた。
「ほん、まに…?」
「…ほんまやで」
少し眉を下げた笑顔ののんちゃんのイルミネーションが映った瞳が、キラキラと輝いた。
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りぃな - 最近花音さんの作品に出会い、いくつか読ませて頂きました。どれも時間を忘れて読み進めてしまうほど面白く、大好きです。制服黒髪小瀧くん、サイコーでした!まっすぐな重岡くんもすごくいい奴で、一年分のキュンキュンを味わった気がします 笑 (2020年10月9日 22時) (レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
らっく。(プロフ) - もう完結してしばらく経ってしまっているので今さらのコメントです…。花音さんの作品、他にもいくつか読ませて頂きましたが、どの作品も描写が丁寧に書かれていて目の前に起こっている出来事のように思えます。「関野のおかげで楽しかった」のコメント狡いな〜っ (2018年11月29日 2時) (レス) id: 2be3d0728d (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - まろんさん» 読みながら絵が浮かぶものを書けたらいいなと思っていたので、入り込んでくださったなんてすごく嬉しいです。素敵な感想ありがとうございました。これからも楽しんでいただけるようなものを書けるよう頑張ります。 (2017年6月4日 19時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
まろん - 凄く文字が丁寧で読んでいてスっと入り込めたストーリーでした。私より年下の方がこんなにもいい小説を書いたのだと素晴らしいなって。主人公になって読んでみて入り込み過ぎてしまいました。これからも次回作楽しみにしております (2017年5月13日 15時) (レス) id: c7f87c9170 (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます。学生だからこそ、というような時間を楽しんでいただけたならなによりです。ファンだなんてもったいないお言葉をありがとうございます。彼の番外編は書くつもりなので、またお会いできたら嬉しいです! (2017年4月29日 16時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花音 | 作成日時:2017年3月27日 22時