カクテル(甘と苦) ページ27
行きつけのバーに行く。
最近は来ていなかった。いや、来れなかったという方が正解かもしれない。 仕事が忙しくて余裕が無かったのだ。
『おすすめで...』
目の前にいるバーテンダーにそう言うと、かしこまりました...と種類がたくさんある中から2つ選んで、1本に纏められた長く艶のある真っ黒な髪をなびかせながら、シャカシャカと音をたててカクテルを調合していく。
｢どうぞ...｣
慣れた手つきでグラスへ移し替え、私の目の前に置く
ひとくち、口へ含むと桃のような味がして、次に苦味が襲ってきた。アルコール度数は低いとはいえないだろう。だが、とても病みつきになるような、そんな味。
｢......最近はいらしてなかったですね。｣
さっきのバーテンダーが話しかけてきた。明らかに私よりは年下な彼(私は30...)に見つめられてどきっとする。
『えぇ。仕事が忙しくて。』
そうですか、と会話は途切れ、少しの間静かな空気が流れる。聞こえるのは店の色っぽいBGMだけ。だけどそれは清楚な色っぽさというか、聞いていて居心地のいいもの。
『カクテル、美味しいわ。甘くて...でも苦味が後から追ってきて......なんだか切ない味ね。』
なぜか、そう感じた。甘さが後から苦味によってかき消されてしまうからだ。
｢...あぁ。｣
バーの数少ない照明が彼の瞳を照らし、その瞳に見つめられる。また、どきっとする。
｢...お客様に出したのが初めてです。｣
そう、と彼から視線を外しカクテルをまたひとくち、口に含む。
｢...ずっと待ってました｣
『...何を？』
｢貴方が来るのを｣
どう答えていいかわからず、私も彼を見つめる。彼は切なそうな瞳をして、透明な視線をこちらに向けてくる。
名前も知らない彼。
知っているのは、年下だということと、彼がバーテンダーだということ。
｢...そろそろお時間ではないですか？｣
彼が私から目を逸らし、傍にあったグラスを拭き始める。
私はバックから携帯を取り出し時間を見た。いつもこの時間帯に帰るからであろう。気を使ってくれたのだ。
｢そうね...｣
カクテルをゆっくりと口の中に流し込み、カランとグラスと氷が音をたてる。
お会計を済まし、タクシーで家に帰る。
私の口の中は、まだあのカクテルの味を欲していた。
(甘さを苦味がかき消す)
(やっと逢えた喜びを時間がかき消す)
(もう1度飲みたい、病みつきになる味だった)
(もう1度逢いたい、また来てくれるような味に)
(...切ない味)
(...俺の想いを表した味)
続く (更新停止中)
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ozだぁ〜 - もう、みんなかっこいいです！特に神田ユウ様っ！！また読み返します！ (2021年4月29日 13時) (
レス) id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音(プロフ) - ホント久しぶりーー！！またよろしくねー(*´∀｀) (2017年3月6日 22時) (レス) id: 01d6e1d1a3 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - 桐宮さん» 初めまして！遊びに来て頂けてとても嬉しく思います！！面白いって言ってくれるなんて！！涙が出てきた！笑 これから再開しようと思うのでよろしくです！！ (2016年12月28日 20時) (レス) id: d2295ce07c (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - 鈴音さん» ひさしぶりー！！！！ずっと更新してなくてごめんー！！また再開しようと思うのでよろしくです！！ (2016年12月28日 20時) (レス) id: d2295ce07c (このIDを非表示/違反報告)
桐宮 - 初めまして☆ 続きあるんですね？あ、脅しじゃないですよ。これ面白いから、続き読みたいなー。なーんて思ったわけですよっ☆ 頑張って下さい! (2016年12月1日 2時) (レス) id: a7d473c89c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆちろ | 作成日時：2015年3月18日 17時
