【原神】異世界二周目、推しのために推し(の視界)から逃げ切ります。

Ep.25　つまり休日って最高！ってことでよろしいです ページ28

拝啓

心臓に悪すぎる職場から離れるだけで空がこんなにも綺麗に見えます。
……なんて。

こんなことを言っていると所謂ブラック企業にこき使われているのかと勘違いされそうだが、間違いなくあの店は従業員もびっくりのホワイト企業だし、嫌な上司も仕事をしてくれない先輩もいない。

心臓に悪すぎるのは時々来るお客様の方だ。主に二人組の。

だがしかし、今日はそんなこと気にしなくてもいい。
休日なのだから、わざわざ鍾離様や「公子」の活動範囲に近付かなければいいのだ。

「休日って素晴らしい……」

心休まる。最高。

……ただ、その代わり絶対に警戒は怠れない。
仕事を理由に厨房に帰れない分、外で会ってしまえば逃げる手段がない。


しかも今日の目的地は万文集舎。
往生堂や北国銀行がある方面でもある。

どうしてそんなギリギリを攻めようとするのかと聞かれれば、答えは一つ。

ずっと読みたかった小説を買いに行くからである。
………だって、どうしても、どうしても読みたいんだもの……！

ずっと続きが気になったままだったし！
今までの休みはそれこそ遭遇を懸念して一歩も外に出なかったし！！

というか本当は、あの日…「公子」と金の髪の旅人さんがあそこで話してさえいなければ買えたはずだった。
あの日の私は、本当は続巻を購入するために万文集舎に行こうとしていたはずだったのだ。

……ストーリー進行上仕方ないとはいえ、そのまま流れに流れてしまった。
もしかしたら最悪、もう売れてしまったかもしれない。

そう考えてしまったらいてもたってもいられなくなってしまったわけで。

よく考えてみて欲しい、私はこの狭い璃月港で鍾離様からややしばらくの間完全に姿を隠し続けていた人間だ。大丈夫。と自分をはげまし……ているといつもヘマをやらかしていた気がするけれど、そこは今から直すとして。

とにかく、私の全てをつぎ込んで万文集舎に辿り着く……！！



＿＿と、意気込んで家を出て数十分。

あまりにもあっさりと到着した目的地に、私の方が拍子抜けしてしまった。


…そうだ。普通は『こう』なのだ。
私の行く先に現れすぎていただけで、本来であればこの貿易港の中ですれ違うことすらないかもしれない人物。

鍾離様も、「公子」も、本当は。

そんな二人が当たり前のように目の前に現れるなんて本当に恵まれているんだか、呪われているんだかわからない。



＿＿＿現時点での個人的な見解は、完全に『呪われている』が八割だけど。

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