絡まりアイ (ｔ) (ページ26)

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お店の外は、来た時とは異なり、風が強く吹いていた。

「うわっ風つよいなー！大丈夫？」

「大丈夫です！ほんと風強い。台風の前みたいですね。」

びゅうびゅうと風に吹かれながら、駐車場まで歩く道で、横尾さんはさりげなく風除けになってくれていた。

車に乗り込み、一息つくとお互い髪が風でボサボサになっていて、2人で笑いあった。

横尾さんは家の前まで送ってくれ、シートベルトを外してお礼を言う。

「今日はありがとうございました。ご飯もとっても美味しかったし、楽しかったです。ごちそうさまです。」

「うん、こちらこそありがとう。また連絡するね。」

私は「はいっ。」と頷いて、彼の顔を見ると、今まで死角になっていた彼の右側の髪に葉っぱが絡んでいるのが見えた。

「あ、動かないでください。」

キョトンとしている横尾さんに向かって左手を伸ばす。

「多分さっきの風で、髪に葉っぱが絡んでて…。」

「ほんと？取れる？」

横尾さんが取りやすいようにぐっと顔を近づけてくれる。

幸いすぐに取れて、「取れましたよ！」って言いながら顔に向き直ると、予想以上に近づいていた顔に驚く。

10センチの距離に彼の顔があり、切れ長の瞳と目が合う。

ドキドキして戸惑っていると、彼が突然フッと笑う。

「このまましちゃうこともできるけど、それだとこの間と同じだから、やめとく。」

言いながら、右手の親指で私の唇をふわっと触り、そのまま離れていった。

「取ってくれてありがと。またね。」

フリーズしてしまっていた私は、ハッとして、「あ、ありがとうございましたっ。」とだけ言ってサッと車を降りた。

降りた車の中で、横尾さんがこちらに軽く手をあげてから車を発進させる。

ぺこっと会釈して、車が見えなくなるまで見送った。

触れられた唇が熱く、動機がおさまらない。

急に強い風が吹き、髪をくるくると絡ませていった。