No.296 ページ5
不意にフィッツジェラルドが顔を上げた。
そして口元に薄く弧を描き、その視線の先の人物に気安い口調で語りかける。
「おや。珍しい客人だ。道にでも迷ったか?……えー……ミスタ・アグラ……アクラーヴァ……」
____コツ。
敦の呻き声以外は聞こえない静かな船内に、靴音が響く。
黒衣を纏った彼は、フィッツジェラルドに底知れぬ闇を宿した瞳を向けて云った。
「芥川」
「それだ」
そう云って、フィッツジェラルドは笑った。
〜*〜*〜*〜
上空の無人機。
白い着物を見に纏い、壁を背に座り込んだ鏡花の息遣いだけが聞こえていたそこに電子音が響いた。
暗かったモニターが明るくなり、機械越しの音声が届く。
『やあ鏡花ちゃん。聞こえるかい?太宰だ』
太宰はインカムを通して鏡花に語り掛けた。
その隣では同じくインカムを着けた時祢が黙してモニターを覗き込んでいる。
『特務課と交渉してね。取り敢えず君を地上に降ろせる事になった』
「……」
黙り込んだ鏡花。
時祢が自分の前に置かれたパソコンの画面に目を走らせながら口を開いた。
『鏡花お姉ちゃん、時祢。之からその無人機の操縦法を教える。先ずはその操作盤で……』
「いい」
彼女の声を遮るように、鏡花が拒絶の言葉を口にした。
時祢は画面から視線を外し、太宰の前に置かれたモニターの中で膝に顔を埋めるようにして体を縮めている鏡花に目をやった。
その鳶色の瞳は、隣に座る兄と同じように僅かに細められていた。
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凛(プロフ) - 仍さん» お祝いのお言葉有難う御座います!このシリーズでも楽しんでいただけるよう頑張らせていただきます! (2019年8月11日 18時) (レス) id: d2f0ba7099 (このIDを非表示/違反報告)
仍 - とても、遅くなりました!続編おめでとうございます! (2019年8月11日 18時) (レス) id: 748d83af02 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - りんさん» コメント有難うございます!そして祝ってくださり有難うございます……!続編でも楽しんでいただけるよう頑張らせて頂きます! (2019年7月19日 23時) (レス) id: d2f0ba7099 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 続編おめでとうございます続き楽しみにしてます (2019年7月19日 23時) (レス) id: bd39a087a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛 | 作成日時:2019年7月19日 23時