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命令3 ページ19

sideシンタロー

実優「桃と文乃か。どうすんの?」

どうもできないだろ。

シン「どっちが死んでも、オレには関係ねーよ」
実優「好きな人か、妹か、どっちか死ぬのに?」

だからなんだよ。

シン「ならもし、この命令がオレと美空に届いてたらお前はどうする? 今のオレと同じこと言うだろ?」
実優「言うけど……」

どうしようもないんだよ。
どっちも死なない方法があるならとっくに実行してる。

実優「でも……」
シン「お前、どうした?」
実優「え?」
シン「さっきまで随分ストレートに言ってたのに、何でそんな」

自信なさそう、というか。

実優「『実優』を保てないっていうのかな」
シン「は?」
実優「何でもない。今回は私は関係ないし、寝る」
シン「よく寝れるなお前」
実優「……きっと桃は殺さないよ」
シン「何でだ?」
実優「さあ、何故でしょう」

すっかりいつもの調子に戻った実優は、くるりと踵を返し、館に向かう。

オレは、実優が笑ったところを見たことがない。
……いや、あるのかもしれないが、記憶にはない。
いつも無表情だ。

だけど、こいつがセトを殺したとき、怖いと思った。
セトを殺した瞬間の、あの目が。

無表情なら良かった。
あの目は、計り知れないほどの黒い感情に満ちていた。

まるで、自分を殺した人を呪っているような、怨念の籠った目だった。

実優「ねぇ」

数十メートルほど離れた場所から、実優が振り返って言う。

実優「私のこと、怖いと思った?」

こいつは本当に的確に、オレの考えていることを聞いてくる。

シン「さあな」

こっちはいつもはぐらかされてるんだ。
同じことしたって支障はないだろう。

実優「ごめん」

突然の謝罪。

実優「眼鏡してたんだけどね」

ああ、そういえば。

シン「なんで眼鏡してんだ?」
実優「いつか、全部教えてあげるよ。約束」

全部。
そんなのは無理に決まってる。

この約束に意味はない。

だけど、なぜか……こいつは約束を守ると思った。

数十メートル先で、実優は小指を立てている。
指切り、ということだろう。

シン「絶対だぞ?」
実優「うん」

仕方なく、実優のところまで歩き、小指を絡ませる。

実優「嘘だったら針千本飲んであげる。あとさ、私も、伸太朗に愛されなくていいや」

愛されなくていいから恋されたい。

生憎オレは、それに対する答えを持ち合わせていない。
人間の心理ほど難しい問題は、この世にはないだろう。

そしてきっと、オレはその問題を一生解けない。

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浅葱(プロフ) - 野いちごストロベリーさん» ありがとうございます。頑張ります。 (2017年8月3日 23時) (レス) id: a8ce9eb597 (このIDを非表示/違反報告)
野いちごストロベリー(プロフ) - いつも見させてもらってます!とても面白いです!これからも頑張ってください! (2017年8月3日 22時) (レス) id: d483f2088d (このIDを非表示/違反報告)
浅葱(プロフ) - snow rabbitさん» うん、頑張る (2017年8月3日 22時) (レス) id: a8ce9eb597 (このIDを非表示/違反報告)
snow rabbit(プロフ) - やった!新作だ!!更新頑張ってね〜! (2017年6月28日 18時) (レス) id: c06f65bcb5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:浅葱 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月28日 17時

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