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流れる涙を拭いながら、丁寧に包帯が巻かれた腕にパーカーの袖を再び被せる。
ずっと気づかないフリしてたけど、こんなに痛かったんだな、なんて今更感じる。
「……やっぱり…幸助には見つかっちゃったか…。」
セト「散々一緒に泣いたじゃないっすか。Aの事位分かるっすよ。」
「……うん。私だけ……変わってない…もんね。分かるか。」
セト「『変わってない』って気にしてるんすか?」
「……別に。」
……気にしてない、なんて。そんな訳ないじゃん。
幸助、だからさ、私は消えちゃえば__
セト「あの日の事、まだ考えてるんじゃないっすか?」
「____ッ…!」
セト「…そんなの、俺達が許すわけないじゃないっすか!」
「私……」
セト「ダメっすよ!そんなの……」
「……いいじゃん…もう……」
消えたっていいじゃないか。
どうなったっていいじゃないか。
私が消えたって、それで困る人なんていないんだから。
私が消えたって、幸助も、つぼみも、修哉も、誰も一人にならないんだから。
今までだって、三人には、私がいないのがもう当たり前になってたでしょう?
私なんて、いても、いなくても変わらないじゃん。
「幸助も、つぼみも、修哉も、仲間がいるんだから私なんて邪魔なだけじゃんっ!!」
思いきり叫んだ。
異常なほどに涙が溢れる。
これは『八つ当たり』という奴に入るのかも知れない。
嫌いになった?
ねえ、そうでしょう?
だから言ったじゃん。私なんて__
突如、ふわりと暖かい物に包まれる。
見ると、幸助は少し哀しそうな表情を浮かべ、私の背中に毛布を被せていた。
「うあっ……うっ…あぁっ……」
ただただ、声をあげて泣く。
セト「……俺達がそんな風に思ってると思ってるんすか?」
「あぁっ……だって……私なんかっ…」
さっきよりも、もっと強く幸助に抱き締められる。
セト「ずっと会いたかったんすよ?」
「そんなのっ……うぁっ……嘘…だよっ…」
セト「信じてくれないっすか…?」
「だ、だって……わっ、私なんか__んんっ」
__幸助が私の口を塞いだ。……幸助の唇で。
離してくれる様子もなく、だからと言って深くなる事もなく、暫くそのままの状態が続く。
ちょうど私が苦しくなる頃、幸助はそれを察してか、口を離した。
セト「…『私なんか』って言ってちゃダメっすよ。Aだって大切な仲間じゃないっすか。」
……と一言。そして、泣きじゃくっている私をまた抱き締めた。
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作者名:夜桜
作成日時:2017年10月15日 23時