42>side:セト ページ45
「……これ……夢じゃ……」
視界を染めた血飛沫の赤と、力なくがくりと首を折ったキドの姿に、やっと俺は今目の前で起きた惨劇を理解した。
カノが、キドを、撃ち殺したんだと。
ありえない、と思った。
カノがそんなことするはずない、とも思った。
でも現実に、今やカノの腕の中にあるのはキドじゃなく ───キドだったモノ、で。
「───カノっ!!!」
気付けば俺は、カノの身体を突き飛ばしていた。
キドの身体はカノの手から離れ、どさり、と地面に落ちる。
カノもまた、酷く息を上がらせて、仰向けに ───俺に押し倒されるような格好になった。
「何でっ!! 何で……こんなことしたんすか!?」
「何で、って……! セトこそ、どうして気付いてくれなかったんだよ……!!」
その悲痛な叫び声にハッとして、カノの顔を見ると ───カノは、泣いていた。
さっきまでの楽しげな嗤い顔は跡形もなく消え去っていて、苦しそうに表情を歪ませ、幾筋もの涙を流していた。
───凍えそうな、涙の色。
「え…………?」
俺はそのとき初めて、やっとカノのことを解ろうと“盗む”の
それは昨夜、キドと交わした言葉から始まった。
そして夕方から昼間にかけて、楽しそうな俺たちを一歩引いたところから眺めていたカノが聞いていた会話、
苦しみに勘づいたAさんに詰め寄られた午前、
見知らぬ誰かに“仲間を殺せ”と命令された朝 ───と、俺はすごい勢いでカノの記憶を遡っていく。
そして ───
『姉ちゃんっ、駄目だ!!』
『 ───成功しないって分かった作戦なら、続ける意味なんてない。
それなら、家族も先輩たちも、殺す理由なんてなくなるでしょう?』
「…………カノ」
「もう……無理だったんだ、ほんと……ずっと抱えてきて、でも誰にも言えなくて……」
知らなかった真実と、気付けなかった苦しみに、戻れない記憶は涙になって溢れだした。
「ごめん、カノ……今まで気付けなくて、ごめん。 こんなに、こんなに近くにいたのに」
そうして、震えるカノの肩をどうしようもなく抱きしめた、そのときだった。
「もう、やめて!!」
Aさんの声が空に轟き、カッと白い光が視界の端を照らしたのは。
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操 - また付け足し。まどマギ知っていて嬉しかったです (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
操 - いえ、面白いので。私人に嫌な言い方するときがあるんです。すみません (2014年11月1日 8時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 操さん» 返信遅れてすみません! たぶん目覚めのシーンとかですよね。 アニメの第十話、確かに意識したので……不快にさせたようならすみません。 似ていないところもたくさんある……はずなのでこれからもよろしくお願いします!コメントありがとうございます! (2014年10月31日 23時) (レス) id: 4032ac221f (このIDを非表示/違反報告)
操 - 付け足し。余計な事言ってすみません (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
操 - 失礼します。まどマギの小説に似てる (2014年10月30日 19時) (レス) id: 25a230a0da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼方 x他1人 | 作者ホームページ:http://s.ameblo.jp/mimio-oshiman/
作成日時:2014年10月6日 13時