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83話 ページ33

実弥は鳴屋敷に入って、Aの姿が見えないことが不思議に思った。

いつもならすぐにやってくるのだが、Aが全然姿を見せない。


「A?」


玄関の戸を開けて入ってみるも、Aの動く音が聞こえない。


「入るぞ」


寝ているのかと思いながら中に入ると、部屋にAの姿は無く、縁側かと歩き出した。

西日が差し込む縁側。

茜色に染まる空と、庭、廊下。そこに、Aはいた。


「A」


実弥が声をかけると、Aは起きる気配がなく、ただ瞼を閉じているだけだった。

隣に腰を下ろすと、Aはようやく目が覚めたようで。


『さねみ……』

「起きたかァ?」

『おはよう、来てたんだね』


Aは体を起こして、実弥と向き合った。

実弥は目を擦るAを見ていると、Aはふと庭を見た。


『夢、見てた……』

「夢?」

『……カナエと、煉獄と、雷生と、育ててくれた人たちが、そこに立ってた』


Aの語る夢を聞いていた。

その夢は、今までAと繋がりの深い人物でできていた様で。


『実弥は、会いたい人いる?』

「会いたい人……」


Aに聞かれると、真っ先に家族が思い浮かんだ。そして、兄弟子で親友の彼。


「家族と、匡近、だなァ」

『……粂野さん』


Aは直接あったことがないが、話には聞いたことあった。

凄く優しい人だということは、実弥を見ていたら分かる。


「……本当、世の中は善良な奴から消えていく」


実弥の言葉に、Aは何も言えなくなった。

実際にそうだろう。

鬼と共存を望み、身寄りを亡くした子達を引き取って育てたカナエ。

独学で柱まで上り詰め、常に先を見据えていた煉獄。


『必ず、鬼を討とうね』

「……お前は出る幕なんてねェ」

『またそういうこと言う〜』


Aは微笑んで実弥を見た。

空は、茜色から、藍色に染まってきていた。



.



.



.



.



.



.



.



この時は誰も想像していないだろう。

破滅までの時間は、刻々と迫っていることに。

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やぁと(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!優しい彼を描けて良かったです。ラストはすごく悩んでできたシーンなので、涙を流していただき感無量でございます。ここまで長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたらよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 20時) (レス) @page49 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 完結おめでとうございます!実弥さん推しの私ですが、こんな実弥さん大好きです!ラストは涙流しながら読みました。 (2021年11月25日 19時) (レス) @page50 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 金平糖さん» 再びコメントありがとうございます!どうにか無事に完結を迎えられました!感動的なラストを金平糖様にお届けできて幸いです。長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたら、その時もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます。最後の最後でどばーーーっと涙が… 本当に、完結おめでとうございます! (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 実弥&左馬刻&勝己LOVEさん» 原作とはかなり性格違ってるのでは?と申し訳ないと思いながら書いてるのですが、喜んでいただけて幸いです。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月14日 23時) (レス) id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月27日 17時

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