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84話 ページ34

あれから数日、実弥は血相を変えて鳴屋敷に向かった。

暫くすると、屋敷が見えてきて。


「A……」


実弥がAのいるであろう場所を探していると、Aは道場の真ん中に立っていた。

いつもと違い、空気が痺れる。

見えないはずの雷が、まるでAの辺りでバチバチと発せられているように感じる。


「A……」

『実弥、来たんだ』


Aはこちらに振り向かずに、声だけで反応した。

実弥も中に入るのを躊躇う。

少しの沈黙が流れると、後からしのぶもやって来た。


「Aさん」

『あら、胡蝶ちゃんまで。
珍しい組み合わせで、どうしたの』


Aの声はいつもと変わらない。

ただ表情が分からない。

笑っているのか、怒っているのか、悲しんでいるのか、なんなのか。


『報せ、聞いたの?』

「えぇ、柱全員に届きました」

『ふーん……、それで?
私を殺しに来た?』

「そうじゃありません」

『じゃあどうして来たの?』


Aの声はいつもと変わらない声色で、全く感情が読めない。

実弥としのぶはAの動き一つ一つに警戒する。

彼女がその気になれば自分たちは一瞬で出遅れる。

それ程に彼女の剣は速い。


「A、お前死ぬ気は?」

『死ぬ気?無いよ、今はまだ』

「今は?」

『目的さえ果たせれば……。
あの子を殺すことさえできれば、後は知らないかな』


Aはこちらに振り向く気配がないまま、話し出した。


『あの子がどうして鬼になったのか。
私はあの子のことをよく知らないから分からないけど、でも、鬼になったのは事実。
そして、それの責任を負って、師範が腹を切ったのも事実』


Aは刀を抜いたかと思うと、瞬きする間で藁人形の首を全て切り落としていた。

瞬きを一度してるその間に、藁人形は首を落としてて、Aは刀を鞘に戻していて。


『あの子がこれからどう出るかは知らないけど、私以上に……善逸の方が辛いかもね』

「……」

『私は二人と直接接した回数はほとんど無い。
それなのに対して、二人は修行期間が重なっているから』


Aは柄に手を伸ばした。


『ねぇお願い、暫く一人にして。
誰もここに近づけないで』

「……泣かないんですか」

『私に泣く資格なんてあると思う?
同じ派から、鬼を出した私たちに』

「……」

『何も知らない他人は離れたところから見ておけばいい。
これは、私たちだけの都合だから。
誰も私たちに関わらないで』


その声は、冷たかった。

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やぁと(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!優しい彼を描けて良かったです。ラストはすごく悩んでできたシーンなので、涙を流していただき感無量でございます。ここまで長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたらよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 20時) (レス) @page49 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 完結おめでとうございます!実弥さん推しの私ですが、こんな実弥さん大好きです!ラストは涙流しながら読みました。 (2021年11月25日 19時) (レス) @page50 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 金平糖さん» 再びコメントありがとうございます!どうにか無事に完結を迎えられました!感動的なラストを金平糖様にお届けできて幸いです。長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたら、その時もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます。最後の最後でどばーーーっと涙が… 本当に、完結おめでとうございます! (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 実弥&左馬刻&勝己LOVEさん» 原作とはかなり性格違ってるのでは?と申し訳ないと思いながら書いてるのですが、喜んでいただけて幸いです。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月14日 23時) (レス) id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月27日 17時

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