20回振ったあの子は灰谷姉でした(4)

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『お前はいけ！！！！
私は大丈夫だから！！！！

命令だ！逃げろタダ！！
お前まで私の前で捕まるんじゃねぇ！！！』



サイレンの鳴り響く中、逃げ切れる位置立っていたタダに叫び、走って行くタダの背中を見送った。







1時間前。

ーーー
ーー




『お久しぶりですね社長』


「悪いねわざわざ呼びつけてしまって」


『構いませんよ
こちらも社長のおかげでいい思いをさせてもらってますので』




高級な黒塗りの車の後部座席に乗り込み、隣に座る狸に微笑みかける。




出発しない車はいつものことで、要件だけ伝えて私は降りるのだ。



車内は誰にも聞かれる事もないし、顔も見られないため安全なのだそう。




「今日も彼は一緒かね」




チラッと後ろでバイクに跨るタダを確認した狸はバカにしたように笑う。



『心配性で』



ふんっと鼻で笑い飛ばした社長は、運転手にアイツも乗せろと命令を出した。



降りた運転手はタダに声をかけて助手席に乗せる。




『…どこかへ向かうのですか？』


「取り引きに同行してもらいたい」


静かに進み出した車に少し緊張が走る。




ついた先は街頭もなく、暗く、まさにこの世の裏側を表しているような場所だった。



「ここだよ」



降りたまえ。そう言った狸をチラッと見てドアを開けて外へ出た。



『っ！！』



車の黒塗りでわかりにくかったが、そこには闇に紛れて黒いスーツを着た強面の男が50人はいた。



『……取り引きでは？』


「そんな事を言ったかな？」


『このくそ狸が！』




ニヤッと笑う狸に開けたままの扉に体をねじ込むと、後ろから運転手が腰に手を回し後ろへ投げ捨てた。



ザッと片膝をついて着地して運転手を睨む。



「君は少し知りすぎた
これ以上はこちらの寝首を掻かれそうなのでね」



パタンと扉を閉めて走って行った車を、クソッ！と睨みながら立ち上がるとすかさずタダが駆け寄った。




「Aさん大丈夫ですか！？」


『……大丈夫かどうかはここを切り抜けてからだ』




男たちの方へ向き直り流石に嫌な汗が背中を伝うのを感じる。




『お前喧嘩の腕は上がったんだろうな？』


「ワカさんに鍛えてもらってますので」


『ここを生きて帰れたら菓子折りでも贈るか』


「それフラグって言うんですよ」


『うるさい
縁起でもない事言うな』




肩と首をポキっと鳴らして、ニヤッと笑う。



『血が騒ぐな


テメェら！！！灰谷ナメてんじゃねぇぞ！！！！！！』

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