150針 ページ8
私は通信の切れた携帯を片手にその場で少し放心する。
しかし直ぐに我に返ってから云われた住所に向かって走り出した。
着いた場所は市街から少し外れた場所で、そこにあったのは廃れた洋館だった。
『………ここに、漱石殿がいる、の?』
何年も使われていないようで、窓ガラスは割れ、洋館自体にもヒビがはいっていたり蔦が巻きついたりしている。
ホラー映画にでも出てきそうなその建物に唾を飲んでから、中に入るために足を踏み出した。
ガタッッ
『ッッ!?』
音と同時に地面が揺れた。
思わずその場に膝をつく。
それから、目の前の洋館が崩れ始めたのだ。
『………は?』
壁やレンガ、装飾用の木枠が音を立てて落ちていく。
『嘘でしょ……!』
私は急いで立ち上がって倒壊に巻き込まれないように距離を置く。
全部が崩れた頃には辺りに砂埃が舞って視界が悪かった。
その中で目を凝らして崩れ落ちた材木やコンクリートの山を見つめる。
『あ………漱石殿!?』
私はコンクリートの上に座っている三毛猫を見つけた。
猫はぐわんと歪むと、その姿は人に変わった。
私は走ってその人に近づいていく。
『漱石殿っ!!』
「む?Aか、遅かったな。」
座っていた漱石殿は私を見つけると何事も無かったのように云う。
『凄く探したんですよっ!!
それに急に建物も壊れるし、何が何だか──』
「A…?」
私がズンズンと漱石殿に近づくと不意に名前を呼ばれる。
聞き覚えのあるその声にゆっくりと首を動かす。
『……社長…森さん……?』
倒れている二人は驚きで目を大きく見開いている。
そして私も同じように目を見開いて二人を見た。
『…なんで、此処に?』
よく見れば二人共怪我をしている。
「A、おぬしは両組織に連絡をして抗争を止めさせよ。
花袋が鼠の居場所を突き止めた。
太宰という男にもそれは伝えてある。
急げ、反撃の時間じゃ。」
遠くなっていた私の意識は漱石殿の声によって急激に戻された。
漱石殿は私に指示を出す。
よく見ると後ろには田山さんも居た。
私は漱石殿からの指示を頭の中で復唱する。
『はいっ!直ぐに取り掛かります。』
唖然としている社長と森さんを他所に私は携帯で与謝野さんと紅葉姐さんに連絡をした。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます!なんと!!私の知らないところでこの作品の名前が上がっていたんですね!嬉しい限りです!!更新ゆっくりですが頑張っていきます!ありがとうございます! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 34857aaa52 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - あるユーザーさんの紹介から飛んできて一気読みしました。原作の雰囲気を崩さないで新しいキャラが動いていて凄いと思いました。話の展開とか言葉のチョイスとかとても好みです…更新楽しみにしてます、頑張ってください!長文失礼しました (2019年10月20日 21時) (レス) id: ad3e66ea3f (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!あけましておめでとうございます!!また動くみんなを見ることが出来ますね!相変わらずの亀さん更新ですがよろしくお願いします! (2019年1月5日 23時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あけおめです!今年ほ更新頑張ってください!作者さん文スト3期4月放送ですよ!来ましたよ!!いろいろと大変かもれませんが頑張ってください! (2019年1月5日 1時) (レス) id: c482d4ca60 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - 桜さん» コメントありがとうございます!!番外編も読んでくださったんですね…(感涙)楽しんでもらえてなによりです!!亀更新ですが頑張りますので気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2018年11月22日 9時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年8月31日 11時