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その日の夜、Aを除く調査員が会議室に集められた。
「敦、あの小娘について何か変わったことは。」
国木田が中島にそう尋ねた。中島は少しの間の後、口を開く。
「Aちゃんは今日、一人で十数人の密輸者を制圧しました。密輸業者は武器密売人だったらしくて………その時、銃を持っていた男から、僕を庇ってくれました。」
「その話は報告書で聞いた。そこじゃない。現場を太宰と共に見に行ったが、余りにも不自然すぎた。」
「大きなクレーターに壁の罅。まるで重力によって捩じ伏せられたり、なにかに弾き飛ばされでもしたようだ。敦くん、君は彼女に助けられたと言ったけど、二人とも殆ど無傷だったね。拳銃を含め、武器を持った相手に彼女は君をどう守ってくれたんだい?」
太宰の目が中島を鋭く射る。中島は冷や汗を流しながら俯いた。
「い、言いたくない……です………」
中島の言葉に、調査員たちは目を見開く。
「Aちゃんは、今日の事をいずれ知られる事だって言っていました。今日知られようが変わらないって……でも、その時のAちゃんは凄く悲しそうで、暗い表情をしてたんです。Aちゃんにだって、知られたくないことくらい、絶対にある筈なんです。……太宰さん、乱歩さん、お二人は、もう彼女が何者なのか、知ってるんじゃないんですか……?」
中島が二人にそう尋ねた。江戸川は駄菓子を食べる手を止める。太宰が口を開いた。
「確かに、ある程度の予想はついてるよ。」
「お願いします。Aちゃんが自分から話すまで、待ってあげてくれませんか……Aちゃんは、警戒するほど悪い子じゃないのは確かなんです。」
「………敦、君何か勘違いしてない?」
江戸川がくるりと椅子を回転させてそう言った。
「僕達は別に、あの子が怪しいとか、危ないとかは思ってないんだよ。彼女を守るためだ。」
「彼女を……守る………?」
「そうだよ。僕の推理は正しい。太宰の予想もきっと当たっているはずだ。だからこの推理を確信させ、彼女を守る必要があるんだ。」
江戸川の目がゆっくりと開かれる。会議室に緊張が走った。
「彼女を狙っているのは、ポートマフィアだ。」
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琉亜 - うち的にはもうちょい安吾との絡み見せて頂きたい (2023年2月23日 23時) (レス) @page7 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月29日 1時