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「これがタピオカドリンクですわ!」
「たぴおか……?これが?蛙の卵ではなく?」
「それは言っちゃいけないやつ。」
ミルクティーの底に沈む黒く丸いそれを見て、彼女は首を傾げた。隣にいた太宰が軽く首を振ると、Aはさらに首をかしげる。
数十分前、ナオミが飲みたいと言い始めたのだが、Aは聞いたことはあれど、それを飲むこともなかったのだそう。特段興味もなかったため、街中で店を見かけても立ち寄ることは無かったし、街中で不思議な飲み物を飲む女子高生を見ても特に気にかけたりはしなかった。そのため、ほぼ初見である。
「本当に知りませんのね……」
「マフィアで話題になったりとかしないの?」
「多分……流行りというものに疎いものですから。気にして着ていこうと思った事がないので。」
「姐さんとかは?知ってるんじゃない?」
「言ってた気がするような………」
「まぁ、とにかく飲んでみてくださいな!あ、タピオカはちゃんと噛まなきゃダメよ?」
「これって硬いの?」
「もちもちしてますわ!」
そう言ってタピオカドリンクを飲むナオミを一瞥したあと、Aもストローに口をつける。少し吸えば、ぽんぽん、と数個丸い玉のようなものが口の中に入ってくる。それに少しびくりと肩を震わせるものだから、太宰は思わず吹き出しそうになるのを何とかこらえた。可愛いなぁなんて思いながら口を抑えていると、もぐもぐと彼女の口が動く。
「美味しいかい?」
「よく分からないわ…少し甘いような…んん、最近の子は不思議なものを好むのね。」
「Aちゃんは舌が肥えてるし、少し大味なのかもね。」
「んん……兄様飲まれます?」
「おや、いいのかい?」
「噛む前に飲み込んでしまうの……飲み物の中に食べ物が入っているなんて初めてだもの。」
「ふふ、そっか。じゃあ貰うよ。」
そう言って、太宰は彼女の手からドリンクを受け取る。彼女にも出来ないことがあって、苦手なことがある。やっぱり私の妹が世界一可愛い。そんな事を思いながら、タピオカの入ったそれを吸い上げる。
「げっほっげぇっほ!タピオカが喉を……!」
「タピオカって攻撃してくるの……?」
「気をつけないとこうなりますわ。」
「僕も何度かなったよ。」
Aは太宰の姿を見て、今度中原にも飲ませてみようかな、なんてくだらないことを考えてしまった。中原は肺活量が更にあるのでもっと悲惨な状態になるだろう。
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Napia - 完結おめでとうございます!! お疲れ様です!! 毎週のように「更新してるかな?」とウキウキしながらみてました!! 番外編も読みますぅ!! (2022年4月26日 16時) (レス) @page37 id: bc58708f8e (このIDを非表示/違反報告)
あんころ(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます!ダントツで面白かったです!! (2022年4月23日 19時) (レス) @page36 id: 9e178210e2 (このIDを非表示/違反報告)
クリスタルパワー(プロフ) - 完結おめでとうございます!!いつも更新を楽しみにしてました!番外編があったら楽しみにしてます! (2022年4月23日 19時) (レス) id: 47ef91694a (このIDを非表示/違反報告)
向月葵(プロフ) - 完結おめでとうございます〜!最初の頃からずっと応援していたので、見届けられてほんとに嬉しいですし、めちゃくちゃ面白かったです!番外編も楽しみにしてますね。 (2022年4月23日 19時) (レス) @page36 id: b81c3ee352 (このIDを非表示/違反報告)
Hazuki(プロフ) - 凄く面白いです!15ページの「鼻歌」が「花歌」になっています…間違っていればすいません。これからも更新楽しみにしています!! (2022年4月21日 20時) (レス) @page15 id: 140c609c2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月16日 11時