捨てられた妹【文スト】

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森と合流するまでの間、二人は終始無言だった。段々と見えてくる二人は、服屋の前でまだ何か揉めているようだった。





｢お願いだよエリスちゃん！Aちゃんとお揃いで来てちょうだいよ！！！｣

｢嫌ったら嫌！！それに、その服は姉様の趣味じゃないからきっと着てくれないわよ！｣

｢そんなぁ〜……｣

｢首領。お待たせしてしまい申し訳ありません。只今戻りました。｣





またいつもの事だなと、中原は気にした様子もなく彼らに声をかけた。森はちらりとそちらを見ると、｢あぁ、やっと来たね！！｣とショッパーの中を漁り始める。





｢Aちゃん！！！このドレスどう！？｣

｢……いつもと変わらぬセンスですこと。お生憎私はそのような気分じゃないので。｣

｢姉様！おかえりなさい！今日はチュウヤと何をしていたの？｣

｢いつも通りよ。ケエキを食べてショッピング。エリスの好きそうな洋菓子も買ってきたわ。｣





森の横を通り過ぎ、エリスと彼らの先を歩いていく彼女を、二人は急いで追いかけた。少し感覚を開けた先を歩く彼女らは、女子トークに花を咲かせていた。





｢なんだかいつもより機嫌が宜しくないね。｣

｢……先程、偶然太宰の野郎と出会しまして。｣

｢あぁなるほど、それで機嫌が悪いのか。やだねぇ〜こっちにまで八つ当たりが回ってくるのは。確か情報を聞き終えた捕虜が数人いたはずだから、帰ったら彼女にその仕事を回すとしよう。憂さ晴らしにはちょうどいい。｣





こんな時でも仕事の話。森にとって、彼女は娘同然に可愛い存在なのだろう。甘やかしているし、大抵の事は笑って許してくれる。怪我をすれば心臓が止まるんじゃないかと言うほど焦るし、彼女が巫山戯て結婚の話題を出してみれば｢まだ早いよ！？｣や｢誰か気になる異性……いやまさかもう既に恋人関係！？！？｣などと慌てふためく。しかしその反面、彼女の黒の才能を利用している節もある。

彼女の異能はどちらかと言うと戦闘向きではなく、拷問向きだ。前線に立つには不向きだ。それでも彼女が重宝されるのは、彼女の身体能力だ。並外れたそれは、前線に立つにふさわしい。そして、太宰にも引けを取らない頭脳は組織にとって重宝されるべきものだった。

それに加えて、彼女には死への恐怖がない。太宰のように死にたがりでも、自 殺願望者というわけでもない。ただ単に生に興味もなく死に興味もない。それが、組織にとって、森にとって特に重要な点なのだろう。

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