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正和は大寿にとっても兄だった。Aがお前の妹なら、俺はお前の兄貴な!となんとも無茶苦茶な理屈を言ってのけた正和だったが、大寿は兄のように彼を慕っていたと思う。





"『大寿、武臣は絶対にAのことを助けてくれる。あいつが反社であっても、俺はあいつを信じてる。Aが危険な目にあうからって理由くらいじゃ、あいつはきっと約束は破らねぇと思うんだ。だから、その時はお前も手を貸してやってほしい。……こんなこと、社長さんにする話じゃねぇか!』"





彼はそう言って、いつものように笑った。血が繋がっていないはずなのに、Aはその明るい笑顔にどこか似ていたのだ。

しかし、正和の葬儀で見たAの笑顔に、あの時の明るさはなかった。それ以降も、彼女は人が変わったようだった。普段通りと変わらないようにも見えたが、笑顔はどこか暗いまま。幼馴染の彼らも、Aがいつもと違うことに気づいていたし、本庄は泣きながら大寿に相談に来たくらいだ。

そこから徐々に、少しずつ、以前の彼女を取り戻していく。それでもやっぱりどこか遠慮がちの暗い笑顔。振る舞いも、話し方も、全ていつも通りなのに、あの明るく可愛らしい笑顔だけが戻らなかった。

しかし、突然の事だった。久々に会った彼女は以前と同じ明るく可愛らしい笑顔を浮かべていたのだ。幼馴染の彼らには、「好きな人が出来たらしい」という風に聞いてはいたし、なんだか最近楽しそうだと連絡をもらっていた。「大寿くん!」と名前を呼ぶ姿も、全部全部、以前の彼女だった。それを変えたのが好きな人、というのなら、彼女の恋人だというのなら、顔だけでも合わせておきたい。同棲についても年齢についても特に言うつもりはなかったし、ふざけた奴ならぶん殴ってやるつもりだったのも事実だが、彼女を取り戻してくれたのもまた事実。

どんな男なのだろうか。そう思った矢先にやって来たのが灰谷蘭だった。明司武臣は正和の予言通り彼女を迎えに来た。それはいい。ただ、灰谷蘭だけが予想外だった。予想外にも程がある。

明司がいるのだから、ありえないと分かっていても、彼女らの交際に裏しか見えない。睨みつける大寿とは裏腹に、蘭はにこりと笑顔を浮かべた。





「あの子の親父さんが死んだのなんて知ってるに決まってんだろ〜?俺らが殺したんだからさ♡」

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Liezabeth Gillies(プロフ) - 中高生が書くような文章ではなくしっかりとした文才があり安心して作品を楽しめます。ところで、どのような結末になるのでしょうか。着地点はどこに、、? (2021年12月1日 1時) (レス) @page43 id: f20a915395 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 面白くて一気読みしました!好き!応援してます! (2021年11月10日 19時) (レス) @page22 id: 1f03340a86 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみません、20話の『頭のおかしい練習に囲まれて』は『頭のおかしい連中に囲まれて』の間違いではないですか? (2021年11月8日 3時) (レス) @page20 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - 文章力ものすごいのに、ギャグ線強くて好きです♡前編からずっと読んでます!花蛸花さんのペースで頑張ってください💪 (2021年11月7日 12時) (レス) @page21 id: 4a45715550 (このIDを非表示/違反報告)
結菜 - 好き、、なんで、こんな、作品作れるの??え?なんでこんなに、文才あるの?え?神様って不公平だね。てか、神様っているのかな?、、、あ、挨拶が遅れてすみません!結菜です!花蛸花さんの作品好きです!面白すぎて一気見しました!!! (2021年11月4日 18時) (レス) @page18 id: 05b53aed2d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年10月30日 2時

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