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蘭は明司の話に耳を傾けながら、Aの服の袖をまくった。複数の痣が目立つその細くて白い腕。夏場でも長袖だった理由はこれだったのかと、今ここでようやく納得することが出来た。
｢児相とか警察に話そうにも、こいつの父親お偉いさんだからな。すぐもみ消されちまう。だから俺はこいつに養子縁組の話をもちかけた。｣
｢養子ィ？んな話聞いてねぇぞ！｣
｢言えるわけねぇだろ。こんなデリケートな話をベラベラと。まぁ、結果断られたけどな。｣
｢……なんで断られた？A、武臣には随分昔から懐いてただろ。｣
｢やりてぇ事があったんだと。｣
佐野言葉にそう返しながら、明司はタバコに火をつけた。虐待を受け続けてまであの家に居たい理由。それを知っているのは明司だけだった。明司は煙をゆっくりと吐き出すと、また口を開いた。
｢こいつの兄貴……正和って言ってな。Aの話によると去年の一月、仕事中に不慮の事故で亡くなったらしい。でもなぁ、こいつはどうにもそれに納得してねぇんだよ。絶対に何かある、絶対におかしいって。もちろん俺は止めた。お蔵入りになった事件を一般人のこいつが探るには些か危険が多すぎる。何か裏のある事件なら尚更。
………もしかしたら、その事件についてなにか分かったことがあったのかも知んねぇな。｣
｢詳しくは聞かねぇと分かんねぇ。｣明司は煙を深く吸い込むと、それをまたゆっくりと吐き出した。
彼女と出会って随分と長くなる。それでも知らないことは山ほどあるようだ。兄の死の真相を知るために一人で戦っていたことも、父親から酷い虐待を受けていたことも。偉く典型的な亭主関白の親父だな、なんて呑気なことしか考えていなかった。あまりにも毎日幸せそうに笑っていたから、虐待なんて言葉が浮かんでこなかった。
あの笑顔の中に、どれほどの苦しみを抱え込んでいたのだろうか。蘭は、彼女の頭をまた、優しく撫でた。
｢……そういや、レオは？｣
｢連れてきてある。事務所の中に入れていいか分かんなかったからまだ車だけど。｣
｢レオって……Aの飼ってる犬？｣
｢そう。デケェけどいい子だよ〜ここ連れてきちゃダメ？Aちゃんも起きた時レオが居た方が安心すると思うんだけど。｣
｢………許可する。｣
佐野のお許しを貰ってすぐ、竜胆は談話室を抜け出した。これで、彼女が起きた時少しは安心出来ればいいのに。
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鈴(プロフ) - 続編おめでとうございます！！ (2021年10月30日 10時) (
レス) @page10 id: df5b843723 (このIDを非表示/違反報告)
りく - 文章の構成などもお上手で先が読みたくなってしまいました。応援しています！ (2021年10月20日 14時) (レス) @page22 id: cb6ced8fcf (このIDを非表示/違反報告)
五条悟(プロフ) - なんかこのまま嬉々として蘭ちゃんが梵天に笑顔で入れそうだな。レオ君と共に (2021年10月16日 6時) (レス) @page4 id: e4f8a98264 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぽぽ(プロフ) - 続編おめでとうございます！！！！これからも更新頑張って下さい(^^) (2021年10月16日 4時) (レス) @page4 id: 908e4168b8 (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - 続編おめでとうございます！これからも楽しく読ませていただきます！ (2021年10月16日 2時) (レス) @page2 id: 530da25b74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花蛸花
| 作成日時：2021年10月16日 2時
