八 異時代交流 ページ8
*
急いで声の元へ向かうと、やはりその主は柴田さんで。静かにお部屋へお邪魔してみると、何やら魘されているようだった。
「え、どうしよう落ち武者さん。
起こした方がいい、よね？」
『恐らくな。』
「あの、柴田さん！ 大丈夫ですか！」
「……ん、く……っ！」
軽く揺すってみるも、起きる気配はなく。
しかし私の声が聞こえてはいるようで、名前を呼んだ時、身を守るように体を固くして縮こまったのを感じた。
……もしかして、『柴田さん』って呼び方に何か嫌な思い出でもあるんだろうか？
「柴田さん、……勝家さん！」
「──はっ！」
やはり、何故かは分からないが彼を『柴田』の姓で呼んだのが良くなかったようで。名で呼んだ途端、彼は弾かれるように身を起こした。
「大丈夫ですか？ 魘されていましたよ」
「──っ!? ……あ、あぁ、問題ない」
肩で大きく呼吸を繰り返す彼の背をそっと撫でてやると、また大きく体を強ばらせたあと、ゆっくりと力を抜いた。
これは、さっきまでの諦めたような脱力ではなく、恐らく安心からくるものだろう。肩からふっと力が抜ける雰囲気を感じた。
相当怖い夢を見ていたのか、先程まで得体の知れない私に向けられていた警戒は薄れ去っていた。
「問題なくないでしょ、手が震えてる。
……白湯でも飲みましょ、ね？」
彼の手を引いて向かう先は、さっき彼と筑前煮を食べた茶の間。まぁ本来は応接間だが。
水を温め彼に差し出す頃には、もう手の震えは収まっていた。少しは落ち着いたようで、何より。
私もその向かい側に失礼して、先程までのことをあまり深く考えず言葉にする。きっと深く考えたら、それすらも汲み取られそうだったから。
「柴田さんって、あの柴田勝家だったんですね。私、算術ばかりやっていたので全然気付けませんでした。……って、今も名前以外なにもピンと来てないんですけど。
……あ、もうこの際なんで勝家さんと呼んでも？」
後ろから落ち武者さんの『言いおったこやつ……』という溜め息が聞こえたがもう気に留めないことにした。
「別に、なんと呼んでもらっても構わない。
『あの』柴田勝家と言われても私にはさっぱりだが、他の者のように『欠かれ柴田』とは呼ばないのか？」
「あー、すみません説明不足で。
多分なんですけど、今貴方がいるのは遠い未来なんですよね。だから、『欠かれ柴田』とか言われても分かんないんで勝家さんとお呼びします。
今更ですけど私、立花 Aといいます」
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します！長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (
レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません！御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います！今後も完結までよろしくお願いします！ (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです！よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます！お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします！（また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい！） (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します！主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです！これからも密かに応援させていただきます！無理のないよう、更新頑張ってください！ (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)
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