三九 東雲の薄藤 ページ39
多忙期で死んでます許して(定期)
*
「──やっと起きたか、寝坊助め」
浮上したけど覚醒はしていない、微睡みに包まれた意識が、三成さんの声によって繋ぎ止められた。
「……ん、みつなりさん? 今何時ですか」
「知らん、恐らく何刻かを聞きたいのだろうが、私がこの時代の刻の数え方など知る訳ないだろう。分かったらさっさと目を覚ませ」
にべもない三成さんの言葉に渋々目を開ける。
「……あれ? 私昨日いつの間に……」
「フン、やはりか。
……あまり刑部に世話をかけさせるな」
刑部さん? 確かに夜は少しお世話になったが……って、あぁ。そうか、彼が私をソファベッドに上げてくれたのか。
でも、なぜそれを彼が知っているのだろうか。
「……その羽織、刑部が着ていたものだろう」
「え」
私に掛けられている羽毛布団の、更にその上。
そこには確かに、彼用に出したくすんだ朱色の羽織が掛けられていた。
「まぁいい……それより早く朝餉の支度をしろ。
じきに刑部も左近も起きてくるぞ」
え、まだ全然空暗いけど。と思ってようやく携帯端末で時間を確認するとまだ5時になったばかり。まぁ今日は、夜寝落ちしてしまった残りのレポートをならないといけないので、寧ろラッキーな時間に目が覚めた、くらいだが本来ならもう2時間は寝てる。
……あぁ、あと三成さんに朝ご飯も要求されたし。
でもふと思ったのだが普通逆じゃないだろうか。先程彼は左近くんと刑部さんが起きるから、朝ご飯の準備をしろと言った。自分が起きたからではなく。
もしかしたら、いやもしかしても。彼は結構優しい人なのだろう。少なくとも臣下であろう2人に対しては。
「了解しました、じゃあ適当に何か作るので待っててください。私もやりかけの作業がありますし、一緒にぼちぼち進めます」
「嗚呼、手に不具合があるなら私を使え」
思わず刑部さんの羽織を羽織る手が止まる。
「なんだ」
「いえ、ありがとうございます」
まるでさも当然、というように言ってのけたということはこちらの方が本来の彼なんだろう。漠然とだが、石田三成という人は"こう"ではないタイプの武将だと、本当に漠然と、思い込んでいたので少し意外というか、私の考えが浅はかなものだったと知らされた。
「はよーござ……は? 刑部さ、え、羽織……え?」
「ヒッヒッ、朝からヨイものを見タ、ヒヒ」
──それから、朝ご飯を作り終わったくらいに起きてきた左近くんに超誤解されたのは内緒。
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します!長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません!御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います!今後も完結までよろしくお願いします! (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです!よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます!お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします!(また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい!) (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します!主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです!これからも密かに応援させていただきます!無理のないよう、更新頑張ってください! (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)
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