異 時 代 交 流【戦バサ逆トリ】

三六　賢き阿呆 ページ36

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「なんでですか、失礼な。
だって、心配だったんでしょ？
私があなた方が寝てる間に何かすると思ったから。しませんけどね。ただ、夜起きてこれやるって言ったら寝づらいかなと思っただけで」

口調は変化ないが、入浴から起床までは顔に包帯を巻かないのか表情から動揺がひしひし伝わる。
普段包帯で隠しているからか知らないが、意外と分かりやすい。まぁこれを伝えてしまうと常に包帯ぐるぐる巻きで動きそうだからやめておく。
それこそ寝てる間に窒息死してしまいそうだ。

「……賢い女は気に食わぬ」

「私、賢いですかね？」

もういいと思ったのか、初めて会った時から今まで崩さなかった怪しげな笑みが崩れた。代わりに見えたのは睨み付けるような視線。しかし不思議と不快感はないものだから面白い。

「……まぁそれで、私怪しいことはしてないんですけど。寝ないんですか？ 寝ないなら私勝手にここで作業しますけど」

「別に構わぬ。
われはぬしの監視をするゆえに、構うな」

そんな事言われても。
試しに私が座ってる床の後ろにあるソファベッドに座るよう勧めてみるも拒否された。

「ぬしは阿呆か」

「だから何です？ 賢いと言えば阿呆と言うし」

本人から許可されたのでレポートを進めながら話していたのだが、思わず顔を上げ振り向く。

「病体の者を寝床へ座らせる奴があるか。
われは癩病ゆえに、伝染るぞ」

らい？ なんじゃそりゃ。
完全に専門外なのでそう言われましても、って感じだ。さくらさんなら分かるかな、と顔を向ける。すると伝染らない、と一言。

「嘘はダメですよぎょーぶさん。そのらい病っていうもの、伝染らないって。
ほら、座った座った。後ろで浮かれると気になるんですよ、仕組みが。気が散ります。
どうしても嫌なら私の横にでも座ればいいじゃないですか。客人に床は悪いかと思ったんですけどあなたがいいならいいですよ」

それでもなお顔を歪ませる彼が鬱陶しくなって、私の横をポンポンと叩く。
すると観念したように溜め息を吐き私の左に腰掛ける。右を叩いたのに左に座ったのは僅かな反抗心だろうか。それとも私が手を出しにくいからだろうか。そこまでは分からない。

「……咎めぬのか」

「何を？ 座れって言ったの私ですし」

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