三二 ムネ肉と戦 ページ32
*
『本当に、何なのでしょう。あの失礼な男は。
自分だってドリルみたいな前髪ですのに』
「まぁまぁ。
存在を知っているならまだしも、知らないならある程度はしょうがない部分も多いって。
さくらさんみたいに完全な悪意は感じなかったから別にいいよ。多分素直なだけ」
蒸した鶏ムネを切り分けながらさくらさんと軽くお話する。別に嘘ではない。
全く自慢できることではないのだが、長らくこういう生活をしていると、相手か単なる興味か、畏敬を含めた好奇の目─その悪意の有無も含め─を向けているかくらいは分かるようになった。
先程の左近くんはただの興味。見たことないものだったので単純に気になったんだろう。一種の感動のようなものも見て取れた。
包帯の彼は驚いただけに見えた。未知の物に遭遇したにしては少し反応が薄かったから。
そしてさくらさんの言う前髪ドリルこと三成さんも、多分驚いただけ。強いて言うなら、少し怖がっているように見えた。あらかた、自分や彼らに危害を加えるものかどうかが分からなかった、といったところだろう。
さっきはああ言ったが、別に咎める気はない。
先程ちぎったレタスを敷いて、ムネ肉を盛り付けていく。安売りしていた胡瓜は塩昆布で和えた。
「……やれ、ぬしらは近々戦でもするのか？」
「わっ!? ……びっくりした。
戦はもう、昔に終わりましたよ」
音もなく後ろから聞こえた声に思わず肩が上がる。振り向くと何かよく分からない台座のようなものに腰掛けて浮遊している………浮遊!?
「えーっと、ぎょーぶさん、でしたっけ？
それどういう仕組みですか？ 浮いてますよね」
思わずしゃがんで台座の下で手を振るが、何かに当たる気配もない。完全に浮いている。
でもうちの床に磁気なんて仕込んでないし……
本当に、どういう仕組み？
「ヒヒッ、そうまで気になるか。
まぁわれとて全知ではないゆえ、その質問には答えあぐねるなァ。やれすまぬ、スマヌ。
……して、話を戻すが戦の前ではない割に、やけに夕餉が豪華な気がするのだが。これも、ぬしらが暮らしやる今の世では普通と言うか？」
「普通……といいますか。特にこれムネ肉なので今では安い方に入りますよ。肉自体のことを仰ってるなら今は普通だと思います。
一般庶民でも食べてますから」
使用している本人に仕組みが分からないならもう無理だと分かり、諦めてお茶碗を出す。
……さて。
片手しか使えない今、ご飯どうやってつごう。
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します！長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (
レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません！御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います！今後も完結までよろしくお願いします！ (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです！よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます！お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします！（また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい！） (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します！主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです！これからも密かに応援させていただきます！無理のないよう、更新頑張ってください！ (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)
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