二八 思わぬ救いの手 ページ28
*
『Aっ!!』
あぁ、さくらさんってあんな大声出せるんだ。
そう、思った瞬間。
とても強い力で引かれる私の左腕。芯の方がギシ、と音を立てた気がした。まぁ、命の危機が迫っている以上、それくらいは誤差に入る。
そして、ガキンッ! と弾かれる目の前の刀。
慌てて後ろを振り向くも、誰もいない。
おかしい、人は勿論だが、霊の類はほぼ全部見えてるはずなのに。私自身に干渉できるようなものを見逃すはずがない。
目の前の刀─白い髪の鋭い青年─も呆気に取られたように、彼の見た目から言い換えるとそれこそ狐につままれたようにこちらを睨んでいる。
よく分からないが、それに命を助けられたことは紛れもない事実だろう。
すると、先程まで包帯の青年の後ろに隠れていた赤髪の彼が、ふと、呟いた。
その名はとても覚えのある名前。
「……ぬしにはそう見えやったのか?」
包帯の青年が有り得ない、と言いたげに彼の方を振り向く。しかし彼はそのまま頷いた。
「姿までしっかりと見えた訳じゃないすけど。
…………雰囲気とぼんやり、あれは勝家です」
雰囲気とか、そこまでは私も分からないけど。
「……勝家さんを、ご存知なんですか?
柴田勝家さんのことですよね」
「っ、そうですソイツ!!
勝家のこと知ってるんすか! つかここどこ?」
先程まで隠れていた赤髪くんがこちらへそろそろとやってくる。白い彼は、包帯さんに窘められて刀を渋々鞘に収めた。
「やれ三成、もうよかろ」と言っていたので三成さんと仰るのだろうか。
とりあえずやっと私の話を聞いてくれる体制が整ったようだったので、もう3回目にもなる慣れた説明を簡単にこなした。
『でもA?
私は勝家さん、なんて方がいらしていたことは聞かされていないのだけど? まぁ歴史は得意な方だから包まずに言うわ。
浅井夫妻がいらしたのが初めてだったのではなくて? だから困惑して私へお話なさったのでは?』
ふわ、と私の方へ絡みつくように戻ってくるさくらさんにそうではないとお話ししていると。
「──ちょ、ちょっと待って!
その、下半身ないの……アンタも見えるんすか? つーかここ、何か色々感じるんですけど……アンタ何やってる人?」
『下半身ないの、なんて……
女性に対して失礼なボウヤねぇ。
私のことは佐倉とでも呼んでくださいまし』
さ、桜? この人が? と呟く赤髪さんに、あぁまだ話すことはあったなぁと思いながら私も自己紹介をした。
苗字と隣人の話も忘れずに。
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します!長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません!御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います!今後も完結までよろしくお願いします! (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです!よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます!お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします!(また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい!) (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します!主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです!これからも密かに応援させていただきます!無理のないよう、更新頑張ってください! (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)
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