三 ジェネレーションギャップ ページ3
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しかし近付いてみるとよく分かる。
彼の体の白く細いこと。
女子としては羨ましいが、ここまでとなると心配するレベルだ。
流石に何かを食べさせた方がいいだろう。
でも私は食べ終わってしまったし、作り直すしかない。少し時間を潰して……そうだ。
「今、湯が張ってありますがどうします?
流石にそのままだと風邪を引きますよ。
着替えはその……知り合いの着物がありますのでそちらを使ってもらったら大丈夫なので、綺麗にしませんか……?」
さりげなく風呂を提案。
うーん、最近暑いからエアコンを効かせておいたのだが……今の彼にはキツイようで少し体が震えている。
今なら温かいですよ、というと彼も揺れたよう。
「……行水、か。……命なれば」
「うーん、そんな。
初対面の方に命令なんてしないですけど、入ってくださるとありがたいです」
恐らく風呂の文化も違うのか、浸かるという概念はまだないようだったが、まぁ湯船のお湯で一式を済ませて貰えるならありがたい。
余計な水を使わずに済むし、なによりシャワーの系統を説明せずに済む。
そこでふと思い当たる。
待って、シャンプーとか石鹸とか大丈夫? と。
「では」
「じゃあ、ちょっとお着替えのもの探してくるのでお待ちください」
上に着物を探しに行くふりをして、部屋を出る。
いや、事実探すのもあるが、当時の文化を調べなければ。そう思い携帯端末を取り出した途端、それが不要となる状況が起こった。
暗い箪笥部屋に、ぼんやりと浮かぶ後ろ姿。
透けたその肩には弓矢。
間違いない、落ち武者さんだ。
「こんばんは、落ち武者さん」
『……あぁ、お主か。
まぁ、霊体となった身に挨拶をする阿呆なんぞお主くらいか。さて、今日は如何した?
どうも、この部屋によくない者が入り込んでいるようだが』
振り向くその顔は相変わらずやつれている。
「それってもしかして、黒っぽい緑の鎧の方?」
『なんと……もしやあの『欠かれ柴田』が?
しかし、我らと似た気配ではないぞ……』
「あー、なんか生きてるっぽい。
透けてなかったし、触れた」
『これはまた、なんと面妖な……遂に妖となったか……? まぁ、戦好きな殿方よりかはまだまともだろうか……』
ふよふよと私の周りを浮きながら顎をさする落ち武者さん。しかし私としてはそんな話をしている暇はない。
「それはいいんだよ落ち武者さん。
落ち武者さん達って、お風呂どうしてたの?」
知り合い─もとい元彼の着物を手に、本題に入る。
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します!長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません!御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います!今後も完結までよろしくお願いします! (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです!よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます!お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします!(また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい!) (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します!主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです!これからも密かに応援させていただきます!無理のないよう、更新頑張ってください! (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)
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