十三 星に願いとさよならを ページ13
*
置いてある沢山の短冊と色ペン。
しかし流石にそこに大人の姿はなく、小学生くらいの子供たちばかりだった。まぁ、私はそういうことは気にしないタチなので、そのまま短冊2枚と色ペン2本を持っていく。
彼が、黄緑の短冊と緑のペンで、私が黄色い短冊に水色のペン。
特にそのチョイスに意味はないけど、彼は緑っぽい方がいいかと思って。
さっき嫌がっていたので受け取らないかと思えば、存外その手は取られた。
休憩所で2人、短冊を前に座り込む。
やはりというべきか、ペンなんて当然当時はないので、書き方を教えてあげた。仕組みも教えたのだが、インクという概念がないらしく、墨でない色が細いものから出る、ということにとても驚いたようだった。
「勝家さん、何書くんですか?」
「貴方……Aは、『言霊』というものを知っているか? 願い事は、言葉にすると弱まるものだという言われだ」
「つまり、口にしたら叶わなくなる、と?」
「左様」
確かにこんな話は今でもよく聞く話だが、実際にそれを言われたのは初めてだ。
どうやら言う気は全くないらしく、短冊に向き直る勝家さん。何かを書き込んでいるので、横目ですっと覗いてみる。
しかし忘れていた。彼は昔の人だということを。
その字は、なんというか、全体的にひょろっこく、漢字は複雑で、文系ならまだしも現代理系な私にとって解読は不可能というべきものだった。
しょうがないので私も短冊に向かい合う。
願い事を短冊に書きながら、ふと思い当たって目は落としたままに声をかける。
「ねぇ勝家さん、明日はどこに行きます?
私、明後日まで休みですし、どうせなので色んなところに行きませんか?
……あれ、勝家さん?」
やけに返事がないのが気になって、短冊を書き終わったタイミングで顔を上げる。
すると、目の前にいるはずの彼はおらず。
机の上に、読めない短冊と蓋のしまったペンが置かれているのみ。
普通なら迷子や事件に思い当たり、辺りを探すのだが、何故かそうではない気がした。
「……帰った、のかな」
手元の、私が書いた短冊を見る。
『勝家さんが、夢と希望をもてますように
追伸 帰りたい時に元の時代へ帰れたらいいな!』
「うん、幸せに過ごせたらいいな。
短冊は……持って帰ろう」
私はペンを返し、私の短冊だけを笹に吊るした。
彼のは勝手に吊るすのもアレだし、持って帰って落ち武者さんあたりに読んでもらおう。
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します!長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません!御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います!今後も完結までよろしくお願いします! (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです!よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます!お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします!(また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい!) (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します!主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです!これからも密かに応援させていただきます!無理のないよう、更新頑張ってください! (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)
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