十二 おくりもの ページ12
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「あの……彩られた玉の全てが飴だというのか。
硬飴に色を付けて売る飴屋は初めてだ」
「なんなら、今の飴玉はみんな味がついているんですよ。折角の機会ですし、勝家さんもお1つどうです?」
彼の目の前に先程買った袋を差し出すと、彼の目が眩しそうに細められた。元より彼に食べさせるつもりで買ったようなものなので、一応全種類揃っている。
まぁ勿論、私も好きだから食べるけど。
「この……うぐいす色のものにも味はあるのか?」
「えぇ勿論。何味だと思います?」
鎧の色も緑系統だし、もしやと思えば案の定彼が目を留めたのは綺麗な黄緑色の飴玉。
「……ずんだか?」
「残念、違います。
ほら、食べてみてください。美味しいですよ」
一瞬『ずんだって何だっけ?』と思ったけど思い出した。他でもない隣人兼友人メリッサの故郷、宮城で親しまれている味だ。よく覚えてないけど、豆からできた餡のようなものだったっけ。お餅につけるんだよね。
「……! 利牟古の様な香りはするが……甘いな」
ん!? りむご……何だそれは。これは正真正銘の青リンゴ味で……ってもしかして、当時は林檎が存在していなかったのか?
甘いのは甘味なので当然だが、恐らく口ぶりから察するに当時は改良とかがまだで酸っぱかったのだろう。えぇ、そんな林檎は食べたくないなぁ。
「多分それで正解だと思います。
今は、『林檎』っていって庶民の間でも流通しているんですよ。美味しいですよね!
……あ、ついでなのでこれ全部差し上げますよ。
一気に食べなくていいので、少しずつ大切に食べてください。そうしたら今の色んな食べ物のお話できますしね」
私のお気に入りであるラムネ味─唯一果物の味ではないが、まぁ最近のものっぽいし大丈夫だろう─を1個つまみ、袋を手渡す。
「しかし……食べようと思って買ったのでは?」
「いや、元よりさしあげるつもりで。」
「ならば……頂戴しよう」
ふっ、と嬉しそうに僅かに綻ぶ彼の顔。
無意識なのだろうが、嬉しさだけに満ちた彼の笑顔を見るのは初めてで、なかなかに破壊力がある。
うーん、これだからイケメンは。
目を逸らした、階段のあと数段先に見えたのは境内。その前に置いてあるのは大きな笹。
「あそこ、笹と短冊置いてありますよ。
お願い事、書きに行きましょ!」
「傀儡となった私に願い事など……」
「じゃあいいですよ私が勝家さんの分もお願い事書くので! 行きましょう!」
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します!長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません!御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います!今後も完結までよろしくお願いします! (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです!よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます!お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします!(また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい!) (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します!主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです!これからも密かに応援させていただきます!無理のないよう、更新頑張ってください! (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)
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