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一 嵐の夜に時亘り ページ1

*


突然だが、私は昔から『視える』タイプだった。
何が、とは言わずもがなだろう。
亡霊、生霊、妖の部類まで、広く全般に『おばけ』といわれるものは何でも見えていた。
まぁ実際はそういうもの以外にも、物に住む、所謂付喪神や、名もなき土地神程度の階級の低いものなら神も見える時があるのだが。

だからかは知らないが、この深夜帯に酷く強ばった顔で佇むずぶ濡れの鎧姿の青年を見ても悲鳴が漏れることはなかった。





時は少し溯る。
うーん、そうだなぁ。ほんの30分くらい。

理由は分からないのだが、突如明日の講義が全て休講になったことにより私の3連休と夜更かしが確定し、久しぶりに浴槽にお湯を張りのんびりとお風呂を満喫していた時だった。

ドォン! という轟音、爆音? と共に大きな光が瞬き、闇に包まれるお風呂場。

確かに先程から大雨は降っていたけど……
どうやらこの家か、そのすぐ近くに雷が落ちたようだった。あまりいい家にも住んでないもので、ブレーカーが落ちてしまったんだろう。

といいつつ、折角のお風呂を出て、入り直す、というのは些か不満だったためすぐさま立ち上がりブレーカーを戻しに行くことはしなかった。
既に暖かいシャワーが必要なこと─髪や体、顔を洗ったり─は終わっていたため、別段お湯がいる訳でもない。
この溜めた浴槽なら暗いままでも温まれる。

それからどれほど浸かったかは、備え付けのデジタル時計がお釈迦になったので分からないが、顔に熱が集まるのを感じたので慣れてきた視界を頼りに風呂を出て、着替えて。
ブレーカーを全て上げて、脱衣場に明かりが灯ったのを確認してから廊下に出て、電気つけた。


そこで話は冒頭に戻る。


しばし、その亡霊さんを眺めてから、ふと違和感に気付く。普通この世のものでない者たちはうっすらと、透けて、というか半透明であるのだが。

どう見ても彼の体は不透明だ。おかしい。

「……霊の類じゃ、ない」

「………やはり。
いっそこの身が、妖でもあれば……」

会話のキャッチボールが成立したとは思えないが、私の声は聞こえているらしい。
全体的に黒味を帯びた緑色の鎧を纏った青年。
その右手には身長ほどもある両刃の薙刀。
しかしそれを構えることはなく、ただ警戒した面持ちでこちらを見つめるだけ。
1歩、近付くと体ごと強ばらせ、纏う鎧がガチャリと大きな音を立てた。しかしすぐにその力を抜いた。

うーん、これは。

「とりあえず髪だけでも拭きましょうか、ね?」

二 命なれば→



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設定タグ:戦国BASARA , 逆トリップ , 朔夜   
作品ジャンル:アニメ
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します!長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません!御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います!今後も完結までよろしくお願いします! (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです!よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます!お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします!(また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい!) (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します!主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです!これからも密かに応援させていただきます!無理のないよう、更新頑張ってください! (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朔夜 | 作者ホームページ:無し  
作成日時:2019年7月5日 18時

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