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13:薔薇の夢【朱桜司】 ページ13

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私が泣いていたとき、『あの人』はやってきた。
深緋色の髪に、どこまでも澄んだ本紫の瞳。
紳士的な笑みを浮かべて、私のもとへとやってきた。



「my lady、ハンカチをどうぞ」


差し出されたハンカチを受け取れば、
そこには一輪のそれはそれは美しいバラが挟まっていて。

もう一度彼の方を見ると、彼はそのバラのように美しい笑顔を咲かせていた。


「あなたに涙は似合わない。smi…笑ってください、ね?」


どこか既視感を感じるその笑顔。
いつの間にか彼のおかげで、笑顔にはなれずとも涙は止まっていた。

白い手袋を外し、親指でそっと丁寧に頬の涙のあとを拭う。
ひんやりとした頬に触れるその指はとても熱く感じられた。
私に触れている間の彼は、先ほどの笑顔とは打って変わって幼い笑み。

やっぱり、どこかで見たことがあるような気がした。


「あと、悲しいときにはこれをどうぞっ」


そう言って差し出されたのは、まさかのうま*棒。
いきなりの庶民感に戸惑いを隠せないでいると、彼は自信満々に言い放つ。


「お菓子を食べているときは、happyな気持ちになれますから!」


だから、悲しいときにはこれでも食べて私を思い出して。

そう言うと、彼は去ってしまった。
名前も言わず正体を明かさないまま、霧のように消えてしまった。
ふわっと漂うのは芳しいバラの香り。

彼はきっとバラの精だったのではないだろうか。
そうとすら思えてきた。


手にあるハンカチでもう一度頬を拭こうと思ったそのとき、
薄いベージュのハンカチに見えたその刺繍。
『Tsukasa.S』の文字。


「…ふふっ」


まったく。おっちょこちょいな妖精もいたものだ。
くすっと笑みを漏らすと、こらえていた涙がすべて溢れてきた。

このバラも、ハンカチも、お菓子も。ぜんぶ夢じゃないといいな。


「……ありがとう、司」


そして私は、若くして亡くなってしまった愛しい恋人へと手を合わせた。


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「深緋(こきひ)色」
「本紫色」

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くるみ - こんにちは!レオくんの話すごく切なかったです。幸せな話もまた読みたいです!これからも頑張ってください! (6月27日 13時) (レス) id: 1520c09c44 (このIDを非表示/違反報告)
さゆな(プロフ) - レオのアンドロイド切ない… (6月25日 20時) (レス) id: a613cbb65f (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 初コメ失礼します!レオくんのケーキとフォークの話がとても切なくて少し悲しい気持ちになりました。読み手をそういう気持ちにさせられるってすごいと思います!応援してるので頑張ってください! (6月3日 22時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - adoraさんの書くせないず可愛くて大好きです!更新いつもありがとうございます…!これからも頑張ってください!! (5月21日 6時) (レス) id: bc4ed3887c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:adora | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年4月24日 0時

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