心臓を貫くのは【朔間凛月】 (ページ3)

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ゆっくりと屋敷の中を歩いていく

古い建物のはずなのに綺麗にされていて、誰かが住んでいるようだ

ある部屋の前を通り過ぎようとすると、ふっと風が吹いた

風の吹いた方向を見ると、少しだけドアが開いている部屋があり覗いてみるとそこには満月の光に照らされた少女がいた

電気も付けずに、ただ椅子に座って月を眺めているようだ

「まさか、ほんとに幽霊…？」

幽霊にしてははっきり映りすぎというか、こんなにはっきり見えるものなのだろうか
など考えながら扉に近づいて行くとギギっと床が軋んだ

「……だれ？」

鈴の音のような幽霊とは思えない澄んだ声が聞こえた
即座に彼女から見えない場所に移動したが、廊下に隠れられる物はなくただ静かに佇んでいる

少女はこちらを向き、椅子から立ち上がった

「誰かいるの…？」

こちらに近付いてくる足音がする

もし、彼女が幽霊ではなかったとしたら自分は不法侵入で犯罪になってしまう
幽霊だとしても怖いけど

どちらにせよ、まずいな
なんて考えていると扉の開く音がした

「あっ……」

「貴方は…？」

少女の顔がハッキリと見えた
絶世の美女、この言葉が似合うだろう

絹のような白い肌、紅い大きな瞳に、長い睫毛
鼻筋は細く、柔らかそうな唇

今までに見たことがない程の美人だった

「どうしてここに？」

「ちょっと散歩してたら、迷って」

なんて苦しい言い訳だろう、騙されるはずがないかと思っていたが先に口から出ていた

「ふふ、そう……1人で寂しかったの、良かったらお茶でもどう？」

クスクスと笑う彼女は、それは美しく
彼女からの誘いを断る男などいるのだろうか、と思いながら二つ返事で返した

「良かった、今準備するね」

ニッコリと笑った名前も知らない彼女と満月の夜のティーパーティーが始まった

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