「ほんかくはろうぃん〜」より,とある場面の七鬼君 ページ18
「本格ハロウィン〜」での,とある場面の七鬼君
長い間,卵の中でくつろいでいた身としては,学校というものは何とも不思議な場所だった。
「この学校に通う」という選択をしたことだけが共通点の,性格も嗜好も異なる人間たちが,誰かしらの意図によっていくつかの集団に分けられ,時間を共有する。
そんな不安定な集団ならば,似た者同士で新たな集団を形成するのは自明の理だったろう。
だが,成熟しきっていない精神はそれでも安寧を得ることができず,ある者は他者を排除することで自らを保ち,ある者は他者から逃避することで自らを守る。
全てが初めての体験である以上,その鬱屈した澱みですら刺激的ではあったが,その影が落ちた先に当惑してもいた。
俺の現状を変えようと家に押しかけてきて,
自分にできることを自身なりに努力して,
忙しなく表情を動かしていた少女が,
――この場所では,能面のような顔で生活している。
*
そんな立花が,校内であるにもかかわらず感情を大きく動かしたなら,黙ってはいられなかった。
脱兎のごとく教室を後にした立花を,手早く帰り支度を済ませて追いかける。
再び立花を視界に入れたとき,立花は,校門で俺の知らない男と会話していた。
まだ邂逅していないKZメンバーかとも思ったが,その男の立ち振る舞いから,只者でないことを感じ取る。
立花の表情も,幸福そうなそれとは程遠い。
俺の目には,油断できない状況であるように映った。
――もし,立花の意思に沿わない動きを,あの男がしたら。
それを合図に,立花を守るべく動こう。
こうして2人と俺との追跡劇が始まることとなった。
*
尾行の手順こそ知っているものの,実行するのは今日が初めてで,なかなかうまくはいかない。
それでも一定の距離を保ち,2人の様子を観察し続けた。
立花は基本的に,男の目をじっと見つめ,そこから何かを見つけようとしていた。
ある瞬間は,その大きな目を限界まで開いて驚いている。
また別の瞬間には,校門での表情が杞憂であったかのように,男に向けて微笑んだ。
ゆらゆらと移りゆく感情は,本来の立花がもつそれに近い。
男は男で,その瞳の奥に立花への愛をにじませている。
やはり親しい間柄だったのだろうと,結論づけたその時。
じくり,と,腹の底がうごめいた。
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いしとせ(プロフ) - HUMAさん» 初めまして,HUMA様。コメントありがとうございます! 好きと言っていただけて,ものすごく嬉しいです。応援ありがとうございます,頭の中の話を全部形にできるよう頑張ります! (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - うみなさん» いらっしゃいませ,うみな様! おまけの翼は,うみな様のコメントが全ての始まりでした……おそらく,コメントいただけてなければ生まれることはなかったです(;・∀・) というわけで,こちらこそありがとうございました!m(_ _)m (2017年1月31日 21時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
HUMA(プロフ) - こういう本編の裏側というか、そんなお話大好きです!いしとせさんの他の作品も凄く好きです。更新頑張って下さい、応援しています! (2017年1月30日 21時) (レス) id: c49a03c503 (このIDを非表示/違反報告)
うみな(プロフ) - いしとせさん» こんにちは。黒木くんと翼のバトル!もう、大興奮でした。翼の策略も、黒木くんの想いも、全てが 物語に沿っており、楽しませていただきました(*^^*) 前回のコメで 私がポロっと口に出したことを 小説にしてくださり、本当に 嬉しいです!! ありがとうございました(#^.^#) (2017年1月30日 20時) (レス) id: 6278f7cc78 (このIDを非表示/違反報告)
いしとせ(プロフ) - こんばんは,コメントありがとうございます。桜様も黒木君と翼推しなんですか! オトナな感じですね(笑) この2人のアイディアが出ればいいんですが……いろんな組み合わせを書いてみたいとは思っています。がんばります! (2017年1月15日 20時) (レス) id: 2e3c8fd945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしとせ | 作成日時:2017年1月13日 21時